肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、症状が現れにくい臓器です。

だからこそ、肝臓からの異常のサインをいち早く見つけることが重要です。

ここでは、肝疾患で「痛み」が現れやすい場所やその原因、

併発しやすい他の症状について解説し、改善方法や注意点などを紹介しています。

 

痛みの原因と肝臓病

そもそも「痛み」とは、神経が異常を察知して脳に伝達することで

初めて自覚できるものです。

つまり、どんな大ケガをしても、神経が感知できなければ「痛み」を認識できません。

例えば、手の指のように繊細さを求められる部位はたくさんの神経が通っているので、

ほんの小さな切り傷でも「痛い」と感じることができ、傷を負ったことに気が付けるのです。

ところが、肝臓には痛みを感じとる神経が通っていません。

これが、肝臓の最大の弱点。

たくさんの機能を受け持つ肝臓はダメージを受けやすいため、

修復能力には優れているのですが、

神経が通っていないために、異常を脳に伝達し、

私たちが痛みとして直接的に異常を認識することはできないのです。

 
ですが、肝臓に異常が起きた場合に痛みを感じるケースもあります。

どうしてでしょうか?

「痛み」の原因

肝臓に何らかの異常が起きた場合、ある程度までは肝臓の自己修復能力によって、

正常な状態に復元することができます。

しかし、この自己修復能力を超えたダメージを受けると炎症が治まらず悪化して、

肝臓が腫れて周囲の組織を圧迫したリ、

肝臓が処理できなかった物質が他の臓器に影響を与えたりすることで、

「痛み」として現れてきます。

肝臓の異常によって生じる痛みは「直接的な痛み」ではなく、

周囲に影響を及ぼした結果として生じる「間接的な痛み」ということです。

これが、神経が通っていないのに肝疾患で痛みを感じる理由です。

そのため、痛みが生じた時には肝臓の異常は

ある程度進行した段階になっていることが多いのです。

 
しかし、痛みの原因となる肝臓の異常は、ウイルス性・薬剤性によるものや、

アルコール性、過食、肥満、運動不足などによる脂肪肝などによるものですね。

しかも、ウイルス性・薬剤性の場合を除き、

多くは軽度な炎症に気づかずに悪化させてしまった結果、痛みを生じることがほとんどです。

痛みとして感じる前に、改善していきましょう。

改善の方法は別項をご覧ください。

痛みの場所と肝臓の病気

肝疾患による痛みは、肝臓の周辺で感じるケースが多く見られます。

では、肝臓はどこにあるのでしょうか?

肝臓は、 胃の右側で横隔膜の下、背中側に位置しています。

このため、肝臓の炎症が悪化してうっ血や胆汁の滞留などによって腫れてくると、

周辺の神経が圧迫され、腹部の右上や背中の右側に痛みを生じることがあります。

こうした痛みは、周辺を押したときにだけ感じる場合もありますが、

寝転んでいるだけでも痛む場合もあります。

いずれも要注意の状態です。

なぜなら、この辺りで痛みを感じるのは、

すでに肝硬変にまで進行している可能性が高いからです。

肝硬変の場合、肝臓周辺の痛みは60~80%の患者に現れる最も多い症状なのです。

 
肝臓は体重の50分の1ほどもある大きな臓器で、重さは約1kg~1.5kgありますから、

周囲を圧迫して痛みを生じるほど腫れていれば、手で容易に触れることができます。

自己診断は禁物ですが、お腹の右上(一番下の肋骨の下部)に手を当てて、

肝臓が触れないか確認してみるのも1つの方法です。

 

痛み以外の症状

肝臓は、他の臓器や器官に関係する様々な物質を合成・分解する働きをしています。

そのため、肝臓に異常があると、体の他の部位にも影響が出てきます。

痛みの他に次のような症状がないか、併せて確認してみましょう。

体が黄色っぽくなる(黄疸)

顔や体の皮膚や眼球の白目の部分が黄色みを帯び、艶が失われてきます。

体の部位では下肢・上肢・胸腹部などに黄疸が現れやすい傾向があります。

黄色が濃ければ濃いほど重症で、肝臓の状態がより悪くなっていることを示します。

また、慢性的な肝疾患の場合は、皮膚が黒っぽくなってきます。

爪の縦筋と変色

爪の表面に縦縞のような筋が生じることがあります。

また、爪の色が黄色や白に変化する現象も見られます。

白くなる場合は、貧血や腎臓病など他の原因も考えられるので、

別の症状がないか確認してみましょう。

黄色くなる方が肝臓の状態が悪いことを示します。

不眠

肝臓は神経系とも密接な関係にあり、機能が低下すると自律神経失調症を起こします。

その結果、眠れなかったり熟睡できなかったりなどの睡眠不足に陥ることが増えてきます。

特に、昼食をとった直後に強い眠気を催したり、

ひと眠りしないと活動できないようになったりする人は、

肝機能が低下している可能性が高いと言えるでしょう。

腹部の盛り上がり

肝臓が位置する腹部の右上部分が盛り上がっていたら、肝臓病を疑いましょう。

肝臓が腫れて、盛り上がりが胃の近くにまで及ぶこともあります。

胃の右横、肋骨の下側を押したときに指が硬いものに触れたり、

強く押すと痛かったりするような場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

また、肝疾患が進行した状態では、腹水が溜まることがあります。

これは肝臓のリンパ液が滲出するなどして生じるものですが、

かなり深刻な状態であることを示す症状です。

下肢のだるさ・痛み

肝機能が低下すると血行が悪くなるため、ふくらはぎなどの下肢にだるさを感じる人がいます。

また、肝硬変など症状が進んだ状態になると、

足が頻繁につったり、痛みが起こりやすくなったりします。

発熱

全身の倦怠感とともに、発熱することがあります。

特にウイルス性肝炎の場合、侵入してきたウイルスに対して免疫システムが応答し、

その結果として発熱します。

しかし、急性肝炎の場合は微熱が続くのと同時に喉の痛みが生じることがあり、

風邪の症状と間違えて処置が遅くなることもあるので、注意が必要です。

なお、ウイルス性以外の肝疾患でも発熱することがありますが、その理由として、

  • 肝機能の低下によって免疫力が弱まったことによる感染症への応答
  • 肝臓の炎症による発熱

などが考えられます。

 

改善する方法

痛みが生じるのは肝炎・脂肪肝などを発症し、それが悪化した結果の1つの症状です。

そして、これらの肝疾患の多くは、

過食・運動不足・アルコールの摂取過多などの食生活や生活習慣に起因しています。

ですから、痛みの元を失くすには、これらを改善することが大切というわけです。

特に、脂肪肝は糖尿病、高血圧、肥満傾向の人が発症しやすいので、

食習慣・生活習慣の改善に努めることをおすすめします。

 
それでは、具体的に注意したい点を上げていきましょう。

食習慣の改善

肝疾患の中にはウイルス性や薬剤性など自分では防ぎきれないものもありますが、

それを除けば多くは食事に原因があると言っても良いでしょう。

次の点に注意して、自分の食生活を見直してみましょう。

  • 飲酒は適量を守る
  • 過食をしない
  • 食事の内容に気を配る

特に肝臓に大きな負担をかけるアルコールの摂取は、肝機能を著しく低下させる上に、

肝臓に脂肪を溜め込みやすくし、脂肪肝の原因になります。

日本人は欧米人よりも体が小さいため、アルコールの分解能力が低い傾向にあるので、

肝臓の負担も大きいと言われています。

…とは言っても、接待やストレスなどで

お酒との縁がなかなか切れないという人も多いことでしょう。

アルコール性肝障害や肝炎と診断された場合は飲酒は厳禁ですが、

肝臓に負担をかけ過ぎないよう適度にたしなむ程度に心掛けてください。

適量の目安は、日本酒1合、ビール中ビン1本程度です。

 
また、前述のようにアルコールの摂取は脂肪肝の原因の1つですが、

飲まない人でも過食によって脂肪肝になるの注意しましょう。

脂肪肝は肝臓に脂肪が蓄積した状態ですが、進行すると肝硬変になってしまいます。

食事から摂った余分なエネルギーは、中性脂肪として肝臓などに蓄えられてしまうため、

肥満傾向の人は適量を守って食べるようにしましょう。

 
また、食事の総量も大切ですが、それ以上に内容にも気を配ることが肝心です。

中性脂肪に変わりやすい炭水化物や脂質の摂取量が多い人は減らし、

野菜やタンパク質で補うようにしましょう。

一般的に、動物性食品に含まれる脂肪(飽和脂肪酸)は中性脂肪に変わりやすいので、

牛肉・豚肉・高脂肪の乳製品などは控えるようにしてください。

かわりに、鶏のササミや、無脂肪の乳製品、魚などの

良質なタンパク質を摂るようにしましょう。

特にイワシ・サバ・サンマなどの青魚には「EPA」や「DHA」といった

脂肪肝の改善に効果がある成分が含まれていますので、おすすめですよ。

また、炭水化物や脂質の吸収を阻害する食物繊維を多く含む食品

(ゴボウや海藻類、豆類など)を積極的に摂るといいですね。

生活習慣の改善

現代人は忙しく、何かと生活リズムが乱れがちですね。

しかし、夜遅くなってからの食事や寝不足は肝臓に負担をかけてしまいます。

できるだけ規則正しい生活を送り、

遅くとも食事は就寝2時間前までに済ませるようにしましょう。

また、忙しいとついつい後回しにしてしまう運動も、

肝臓の負担を軽くする大きなポイントです。

適度な運動は、

  • 血行を良くすることで、血液を大量に必要とする肝臓に新鮮な血液を送れる。
  • エネルギーを消費し、代謝を行う肝臓の負担を軽減できる。
  • ストレスを解消できるので、肝臓にダメージを与える活性酸素の発生を抑制できる。

などのメリットがあります。

特に、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は

脂肪の燃焼効果が高いので、おすすめです。

できれば週に3日は行うようにしましょう。

 
また、休息も肝機能の回復には重要な要素です。

肝臓の修復は、主に睡眠時に行われているからです。

ですから、運動をとり入れて適度な疲労感を得ることは、

就寝時間を早め、深い眠りに誘う効果もあります。

規則正しい生活と適度な運動で、肝機能の回復をバックアップしてあげましょう。