たくさんある血液検査の項目の中で、コレステロールの数値を気にする人は多いようです。

最近では“善玉”“悪玉”などの種類があることも広く知られてきました。

でも、コレステロールが基準値以外だと、どのような問題があるのでしょうか?

ここでは、総コレステロール値が異常となった場合について、その原因や疑われる病気、

改善する方法など、肝疾患を中心にわかりやすくお伝えします。

総コレステロール(TC)とは?

コレステロールは肝臓で作られる、生体内で重要な役割を持つ脂質の一種です。

細胞を守る細胞膜や男性・女性ホルモンに代表されるステロイドホルモン、

脂質の消化に関わる胆汁酸、ビタミンDなどの原料となる重要な物質なのです。

 

しかし、脂質のままだと水分が多い血液に馴染むことができないでの、

水に馴染みやすいたんぱく質と結合して、血液とともに全身に運ばれていきます。

この結合体を“リポたんぱく”といいます。

リポたんぱくにはいくつか種類がありますが、

血流にのって肝臓から全身の組織にコレステロールを運ぶ“LDL(悪玉)コレステロール”と、

余分なコレステロールを全身から肝臓へと回収する“HDL(善玉)コレステロール”の、

2種類をあわせたものを“総コレステロール”といいます。

 

基準値および境界値の見方

総コレステロールの基準値と境界値
血液検査の項目基準値境界値
総コレステロール(TC)140~220 ㎎/㎗201~219 ㎎/㎗

基準値について

検査結果の基準値には範囲がありますが、この値は検査機関や検査方法によって多少異なります。

目安となる数値を以下の通り挙げますので、参考にしてください。

検査結果が手元にある場合は、その検査機関や方法による基準値が明記されているので、

そちらを優先してください。

なお、基準値とは「医学的に正常か異常かを判断するための目安」です。

なので、基準値内である場合は、基本的に問題がないと解釈できます。

しかし、総コレステロールの場合は、基準値内だからといって安心できません。

 

なぜなら、総コレステロール値はLDLコレステロールとHDLコレステロールの合計ですから、

内訳についてもきちんと見る必要があるのです。

つまり、総コレステロール値が正常値であっても、LDLコレステロール値が高く、

HDLコレステロール値が低いケースが考えられ、

この場合は動脈硬化の危険性は非常に高くなるからです。

もちろん、逆の組み合わせも考えられます。

 

このため、日本動脈硬化学会の「脂質異常症の診断基準」(2007年)では、

動脈硬化性疾患リスクの診断基準から総コレステロールが除外されました。

しかし、基準値から外れているということは、

体のどこかに異常を抱えていることに変わりはありません。

他の検査数値と併せて、その原因を探る必要があります。

境界値について

総コレステロールには基準値の他に“境界値”が設けられています。

これは、基準値内であっても異常と隣り合わせになっている状態を表しています。

なお、検査機関によっては、基準値の上限を境界値の下限値未満としているものもあります。

境界値内の場合はすぐに“異常”と診断されるわけではありませんが、

今のままの生活を続けていると、

遠からず高コレステロール血症になる可能性が高いということ示しています。

できるだけ早く対策を行うようにしましょう。

 

検査でわかることと疑われる病気

コレステロールは脂質の一種であるためか、悪者のイメージを持たれることが多いようです。

しかし、医学的には数値が高くても低くても“異常”があることになります。

実際に異常値を示す時には、次表にあるような重大な病気が隠れていることも少なくありません。

総コレステロールが基準値から外れた場合に疑われる病気
総コレステロール疑われる病気
高い場合脂質異常症、家族性高コレステロール血症、原発性胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸、甲状腺機能低下症、糖尿病、肥満など
低い場合原発性低コレステロール血症、低リポたんぱく血症、肝硬変、甲状腺機能亢進症、栄養障害、アジソン病など

 

それでは、総コレステロール値が高い場合と低い場合に分けて、それぞれ説明しましょう。

高い場合

よく問題視されるのが、数値が高いときです。

この場合は、まず“動脈硬化”が進行していることが推測されます。

動脈硬化とは、血管の弾力が失われて硬くなり、

内側の壁にLDLコレステロールなどが溜まって狭くなった結果、

血液が流れにくくなっている状態のことです。

進行すると血管が細くなったり詰まったりして、

心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の原因になる可能性が高くなるので、注意が必要です。

 

一方で、数値が高くなる疾患には、原発性胆汁性肝硬変や閉塞性黄疸などの肝疾患があります。

原発性胆汁性肝硬変とは、肝臓の中の胆管が自己免疫のメカニズムによって破壊され、

胆汁の流れが悪くなる病気です。

症状として、かゆみ、疲労感、口の渇き、ドライアイ、黄疸などがみられます。

 

閉塞性黄疸とは、肝臓の異常により胆管が塞がり、

腸の中に排出されるべき胆汁が血液中を逆流して起こる黄疸のことを言います。

眼球の白い部分などが黄色っぽくなるのが特徴です。

他には、脂質の代謝に異常がある脂質異常症や、

遺伝的にコレステロール値が高くなる家族性高コレステロール血症、

甲状腺機能低下症や糖尿病などの疾患でも、

総コレステロール値が高くなる傾向があります。

低い場合

数値が高くなる場合と違って、低いと軽視されがちですが、

重篤な疾患が隠れていることもあり、注意が必要です。

特に、数値が極端に低い場合や、検査するたびに下がっていくような場合は、

肝硬変などが疑われます。

 

肝硬変とは、肝炎によって傷ついた細胞が修復を繰り返しているうちに線維化し、

肝臓全体が硬くなった状態です。

肝細胞は線維化すると本来の働きができなくなってしまうため、

肝臓としての機能も低下してしまいます。

コレステロールは肝臓で合成・回収される物質ですから、

その量に変化が生じるというわけです。

 

他にも、コレステロールを大量に消費してしまう甲状腺機能亢進症、

副腎皮質の機能が低下していくアジソン病、

脂質の血中濃度が低くなる低リポたんぱく血症などがあります。

また、こういった疾患がないのに、

血液中の総コレステロール値が低くなる(一般的に120㎎/㎗未満)ことがあり、

これを“原発性低コレステロール血症”といいます。

コレステロールの合成や輸送に関わる経緯のどこかに異常が見られことが多く、

治療が必要になることは少ないようです。

 

原因と改善の方法

総コレステロール値が変動する原因は、大きく3つに分けることができます。

ここでは、その原因とともに改善策について見ていきましょう。

代謝の異常(基礎疾患)

総コレステロールは、コレステロールを供給するLDLコレステロールと、

回収するHDLコレステロールを合わせたものです。

ですから、この供給と回収に関わる代謝経路のどこかに異常(=病気)があると、数値が変動します。

例えば、原発性胆汁性肝硬変では回収されたコレステロールを胆汁中に排出できず、

その結果、コレステロール値が高くなる、というものです。

また、脂肪肝のように体内の脂肪量が多い人では脂質の代謝に異常がおこり、

数値が高くなる傾向があります。

 

逆に病気によって総コレステロール値が下がることもあります。

肝臓にはコレステロールを合成する働きがありますが、

急性・慢性肝炎、肝硬変、劇症肝炎などによって肝機能が低下していると、

必要な量のコレステロールを合成できず、数値が低くなります。

また、甲状腺機能亢進症ではコレステロールの消費量が増えてしまうので、

その結果、数値が下がってしまいます。

 

他にも、遺伝的な要因でコレステロールの代謝経路に異常があるケースもあります。

このような疾患があって、その結果として総コレステロール値が変動している場合は、

医師の指示に従って治療を行うのが先決です。

あわせて次項の「食事の影響」も考えられますので、参考にしてくださいね。

食事の影響

健康な人ならば、食事がコレステロール値に影響することはありません。

血液中のコレステロールの8割は体内で合成されたもので、

食事に由来するものは2割程度にすぎないからです。

しかし、体のどこかに異常があると、食事の影響が大きくなってきます。

コレステロールは脂質の一種ですから、コレステロールそのものや脂質を多く含む食事を

好んで摂っていると、代謝が正常に行われずに血中濃度が高くなってきます。

 

また、糖質も体脂肪の原料になるので、糖質の摂りすぎでも数値が高くなります。

この場合、高くなるのは主にLDLコレステロールの方です。

悪玉コレステロールとも呼ばれるように、

増えすぎると動脈硬化の原因となってしまいます。注意が必要ですね。

 

逆に、栄養不足だと数値が下がってしまいます。

コレステロールは細胞膜やホルモン、ビタミンDなどの材料となる大切な物質ですが、

その原料となる脂質やコレステロールが、

食事から十分に摂れないためにおこる現象です。

無理なダイエットや極端な食事制限を行っていると、

数値が下がってしまうので気を付けましょう。

 

食事には個人の好みが最も大きく表れるものです。

栄養のバランスを考え、多すぎも少なすぎもしない、適切な食事量を守るようにしましょう。

LDLコレステロールが高い人は食物繊維を積極的に摂ることで、動脈硬化が予防できます。

特に海藻類がお勧めですので、食事に多く取り入れていきましょう。

生活習慣の影響

前項の「食事の影響」とも関係がありますが、

個人の毎日の習慣がコレステロール値に影響を与えているケースは、

実は少なくありません。ここでは、食事以外の点について見てみましょう。

まず、数値を上げる要因としては、運動があります。

運動にはHDLコレステロール値を上げる働きがあるので、

習慣的に運動を行っている人によく見られる現象です。

 

また、少量の飲酒でもHDLコレステロールが高くなる傾向があります。

逆に、運動を好まない人、運動不足になりがちな人は、

HDLコレステロールが下がりやすいので気を付けましょう。

特に肥満だと、LDLコレステロールが高くなりがちです。

その結果として総コレステロール値としての数値が変動しにくいことがあります。

内訳も確認するようにしましょう。

 

なお、喫煙習慣がある人は確実にHDLコレステロール値が下がります。

HDLコレステロールの影響で総コレステロール値が下がっている場合は、

禁煙を実行しましょう。

 

習慣化している毎日の生活を改善するのは簡単ではありません。

忙しくて運動の時間が取れない、

不規則な生活、付き合いでのお酒や食事…

確かに毎日きちんとした生活を送るのは難しいかもしれません。

でも、通勤にウォーキングを取り入れたり、階段を利用したり、

酒の肴から油っこいものを減らしたりなら、実践できそうではありませんか?

自分の努力で改善できるうちに、少しでも体の負担をと取り除いてやることが、

長い人生を楽しむ秘訣ではないでしょうか。

やれるところから1つずつ実践してみましょう。

 

異常値の時の注意点など

総コレステロール値の増減をみるときに、忘れてはいけないことがあります。

それは、「どのコレステロール値が変動した結果なのか」という点です。

総コレステロールはLDLコレステロールとHDLコレステロールの合計だからです。

ですから、総コレステロールが基準値内であったとしても、HDLコレステロールが低く

LDLコレステロールが高いならば“異常である”という認識が必要です。

 

総コレステロール値だけに惑わされることなく、

内訳であるこれらの数値も併せてみる必要があるのです。

一般的に、HDLコレステロール(善玉)が高くなる場合は問題が少なく、

LDLコレステロール(悪玉)が高くなる場合は動脈硬化のリスクが高いとして注意が必要ですが、

HDLコレステロールが低くなるとLDLコレステロールが増えてしまいますし、

LDLコレステロールが低すぎれば体に必要なコレステロールが、

供給できていないことになります。

コレステロールに関する数値の判断には、

HDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスが重要ということですね。

 

しかし、数値が変動する要因に病気がある場合を除いては、

その原因を知ることで自己コントロールが可能な要素でもあります。

特に、動脈硬化は進行すると心筋梗塞や脳梗塞の原因となり、

重い後遺症が残ったり、死に至ったりするケースも稀ではありません。

ですが、動脈硬化は生活習慣や食習慣などの改善によって、予防することが可能な症状なのです。

総コレステロール値の異常が体の不調となって現れる前に、自分でできる改善策を

実行することをお勧めします。