にんにくは料理の風味付けとしてよく使われる食材ですが、

昔から「疲れた時にはにんにくを食べると良い」とも言われています。

にんにくには“パワーの源”のイメージがありますね。

そしてこのパワーは疲れた肝臓も元気になるようサポートしてくれるのです。

ただし、強力であるがゆえに、摂取にあたってはちょっとした注意も必要です。

ここでは、にんにくの肝臓への効果を中心に、

上手な摂り方や、注意点について詳しくお伝えしています。

 

そもそもにんにくとは?

古くから滋養強壮効果があるとして食べられてきた「にんにく」。

驚くべきことに、紀元前3200年頃には古代エジプトなどで栽培・利用されており、

最古の医学書『エーベルス・パピルス』 には薬として掲載されています。

日本には中国を経て8世紀頃に伝わったとされており、

現在でも民間療法の1つとして、にんにくの効用が利用されています。

 
これには、にんにくがもつ多くの成分の有用性が関係しています。

ビタミン類やポリフェノールなどが1かけらのにんにくにギッシリと詰まっているからです。

また、ある程度の保存ができる点も古くから重宝された理由の1つでしょう。

ピラミッドの建設現場で働く人や、

兵隊などに強壮剤として与えたという記述が残っているほど、

昔から経験的ににんにくのパワーを利用してきました。

しかし、現在では科学の進歩に伴って、その成分が明らかにされています。

次項では、これらの成分のうち肝機能をサポートするものを中心に

詳しく説明していきましょう。

 

肝臓への効果がある物質

にんにくに含まれる成分については様々な研究が行われ、

その効果は実験室レベルで確認されていますが、

実際の体内での挙動については解明が待たれる点も少なくありません。

中国ではにんにくを利用したB型肝炎や黄疸の治療法があるそうですが、

科学的データには乏しいとされています。

しかし、経験的に効果が認められているのも事実ですね。

肝臓に対して臨床的に効果が確認されている成分や、

効果が高いと考えられている成分は次の通りです。

  • アリシン
  • DADS(ジアリルジスルフィド)
  • DATS(ジアリルトリスルフィド)
  • ビタミン類(特にビタミンB群、E)
  • ポリフェノール

にんにくを利用する場合は、特定の抽出成分を用いるよりも、

エキスのように複数の成分が混ざり合った状態や

にんにくのまま摂取することが多いようです。

にんにくサプリメントもこのタイプですね。

各成分の作用の仕方や効果については次項をご覧ください。

 

にんにくに期待される肝臓への効果

にんにくには実に多様な成分が含まれていますが、

肝臓への効果としては次の3つがあげられます。

  • 代謝のサポート
  • 解毒のサポート
  • 抗酸化作用

前項で紹介した成分が補い合ったり、

体内で反応を起こしたりしながら肝臓によい働きをしているのです。

それでは詳しく見ていきましょう。

代謝のサポート

肝臓では食品から摂った栄養素の代謝が行われていますが、

にんにくに含まれる成分の中にはこの働きを助けるものがいくつかあります。

例えば、ビタミンB群です。

 
ビタミンB群には、

  • 糖質の代謝を促進する(ビタミンB1)
  • 脂質の代謝や脂肪燃焼を促進する(ビタミンB2)
  • タンパク質の代謝を促進する(ビタミンB6)

などがありますが、にんにくにはどれも豊富に含まれています。

特に、ビタミンB1は糖質代謝の要であるため、疲労回復のビタミンとして有名です。

しかし、体内での吸収率が低いため、大量に摂取しても5~10㎎程度しか吸収できず、

残りは排出されてしまうと言われています。

ところが、この吸収を高める作用がにんにくにはあるのです。

 
にんにくには「アリイン」という成分が含まれており、

切ったりすりおろしたりすることでアリインと酵素「アリナーゼ」が反応し、

「アリシン」という物質に変化します。

このアリシンがビタミンB1と結びつくことによって

「アリチアミン」という物質に変化することが、

京都大学と武田薬品工業の共同研究によって発見されました(1952年)。

アリチアミンはビタミンB1の吸収率を高めるだけでなく、

余分なビタミンが体内に貯蔵できるようにする働きを持っています。

これを利用したのが、あの有名な栄養剤「アリナミン」です。

にんにくを摂るということは、肝臓での代謝を助けると同時に、

栄養剤を飲むのと同じような効果が得られるわけですね。

アリチアミンには水溶性のビタミンB1を調理過程で失われにくくする働きもあります。

ですから、ビタミンB1を多く含む豚肉などと一緒に、

スライスやすりおろしたにんにくを使うと残存率を上げ、

吸収率も高めることができるので、おすすめですよ。

また、アリシンには胆汁の分泌と排泄を促進する作用もあり、

肝臓での脂肪代謝を高めるので、脂肪肝対策にも有効です。

 
さらに、にんにく摂取のメリットとなるのがビタミンB6です。

ビタミンB6はタンパク質からエネルギーをつくり出す代謝に必要な

約100種類の酵素の働きを助けるビタミンで、肝臓に多く蓄えられています。

また、肝臓に脂肪を溜めないように働くので脂肪肝の予防・改善にも効果がありますが、

長期間のアルコール摂取によって

ビタミンB6を効率よく利用できなくなったり、必要量が高まったりする弊害を

改善すると言われています。

飲酒の機会が多い人は積極的に摂りたいビタミンの1つですが、

実はにんにくのビタミンB6含有量は全食品中でナンバーワン!

次に多い「マグロ」「牛レバー」などの1.5倍以上に相当します。

にんにく1かけらで1日の推奨量の13%も摂れるので、

これらの食材と組み合わせれば効果的に摂取できますね。

解毒のサポート

にんにくから生じるアリシンがオイルに溶かされると、分解・結合して

  • DADS(ジアリルジスルフィド)
  • DATS(ジアリルトリスルフィド)

といったスルフィド類に変化します。

スルフィド類はその種類によって生理作用が認められているものがあり、

DATSはガン細胞の増殖を抑制したり、

ガン化した細胞を正常な状態に戻したりすることがわかっています。

また、DADSは肝臓での解毒作用を活性化することが確認されており、

アルコールの分解を早める効果もあるため、悪酔いや二日酔い防止に効果があります。

また、抗酸化作用もあるので、活性酸素から肝細胞を守るのにも有効ですよ。

ただし、DADSやDATSはにんにくをオイルに混ぜないと生じません。

ですから、細かく刻んだにんにくを低温から調理する方法は、

DADSやDATSの合成に適しています。

お酒を飲むときはイタリア料理やスペイン料理、

ガーリックオイルなどを積極的に摂ると良いですね。

 
また、にんにくには強力な抗菌・殺菌作用があります。

にんにくから生じるアリシンによるところが大きいのですが、

アリシンが調理などによって変化しても抗菌・殺菌力は残ります。

体内に細菌やウイルスが侵入すると、毒素を産生する場合がありますね。

こういった毒素は肝臓での解毒の対象となる物質です。

細菌やウイルスが体内で生き残れば、増殖して大量の毒素を発生させ、

肝臓の負担が増すことになりますね。

にんにくは細菌やウイルスが毒素を産生する前に殺菌して、

肝臓に影響が及ぶのを未然に防いでくれるわけです。

ちなみに、アリシンには23種の細菌、6種の真菌(カビの仲間)、病原性酵母、

サルモネラ菌などに対する殺菌効力があります。

この効力は抗生物質「ペニシリン」と同等とみる研究者もいるほどなんですよ。

抗酸化作用

にんにくには抗酸化作用のあるビタミン

「α-トコフェロール(ビタミンE)」が含まれていますが、

他にもアリシン、アホエンなどの硫黄化合物、ポリフェノール類を含め、

15種類以上の抗酸化物質が含まれていると言われています。

 
抗酸化物質とは、体内で発生する過剰な活性酸素を除去し、

活性酸素によって細胞やDNA(遺伝情報)が傷つけられるのを防ぐ働きがあります。

活性酸素はエネルギー代謝などを行う過程で多く発生するため、

これを担う肝臓は常に活性酸素の危険にさらされているといって良いでしょう。

また、飲酒によってもたらされるアルコールは肝臓で解毒されますが、

この過程でも大量の活性酸素を生み出してしまいます。

また、喫煙やストレスによっても体内の活性酸素量が上昇することがわかっていますので、

現代を生きる私たちは、より多くの活性酸素の脅威にさらされていると言えますね。

しかし、抗酸化物質が存在すれば活性酸素を除去し、肝臓を守ることができるわけです。

 
また、活性酸素は中性脂肪と結びつくとこれを酸化し、

「過酸化脂質」という厄介な物質に変えてしまいます。

過酸化脂質が蓄積すると動脈硬化を引き起こし、

糖尿病や癌などを発症するリスクが高まるほか、

肝炎や肝硬変の原因になると考えられています。

しかし、過酸化脂質は体外に排出されにくい性質を持っています。

これを分解してくれるのが唯一、肝臓です。

肝臓は体中に生じた過酸化脂質を一手に引き受け、処理を行います。

ですから、過酸化脂質が増えることは肝臓の負担をより増やすことになってしまうわけですね。

この負担を軽減するには抗酸化物質が有効です。

にんにくには多様な抗酸化物質が含まれているので、補給するのに最適ですね。

 

効果を高めるための摂取の方法

このように、にんにくは肝臓の働きを様々な面からサポートしてくれる、優れた食材です。

ですが、この効果を十分に引き出すためには注意が必要です。

 
例えば、アリシン。

アリシンはビタミンB1の吸収や貯蔵量を高めることができ、

強い抗菌・殺菌作用を持った物質です。

ただし、にんにく中にはアリシンとして存在していないので、

「切る」「すりおろす」などによって細胞を壊し、酵素と反応させないとなりません。

にんにくのかけらを丸ごと使いたいときでも、

叩いて潰した方がアリシンの合成には効果的なわけです。

また、にんにくの抗菌・殺菌作用はアリシンが変化して生じる硫黄化合物にもありますが、

アリシンが一番強い効力を持っています。

ですから、殺菌力を維持したければ、生のまま使うのが最適です。

ただし、アリシンは揮発性の高い成分なので、

使用する直前に切ったりすりおろしたりすることをおすすめします。

 
一方、DADSやDATSを利用したい場合は、オイルに浸すことが重要です。

できれば細かく刻んで混ぜるのが理想的です。

お手軽なのは、にんにくをオイル漬けにして「ガーリックオイル」を作っておく方法。

これを利用すれば料理のたびに指がにんにく臭くならずにすみますし、

数カ月は保存できます。

鷹の爪(とうがらし)を一緒に入れても良い風味になりますよ。

 
ただし、にんにくの成分には刺激的なものも多いので、

効果があるからと言って大量に摂取することは体に良くありません。

にんにくの効果を得るための適量は、健康な人ならば次表を目安に摂ると良いでしょう。

 

ニンニクの摂取目安量
摂り方目安量(1日分)
生にんにく
(おろしにんにく) 
1片
加熱したにんにく 2~3片

なお、摂取量は体調や飲酒などの状況によって加減するようにしましょう。
子供がにんにくを食べる場合は、この半分以下にしてくださいね。

 

にんにくのデメリットと注意点

健康な人が適量を守って食べている限り、大きな弊害はないと思いますが、

体質や体調によっては体に悪い影響を及ぼすこともあり得ます。

例えば、

  • 息が臭くなる
  • 腹痛・膨満感
  • 血が止まりにくくなる
  • めまいがする
  • 皮膚が荒れる

などです。

特に、にんにくを食べた後のニオイは健康な人でも気になりますよね。

このニオイの元がアリシンなんです。肝機能サポートの代表的な成分ですね。

ですから、ニオイがどうしても気になるという場合は、

摂取のタイミングを選ぶか、サプリメントを利用する方が良いでしょう。

 
また、生のにんにくは成分が変化する前の状態なので、刺激性の物質が多く含まれています。

これらが胃の粘膜を刺激して胃液の分泌などを促し、消化を促進させる効果があるのですが、

大量だったり空腹時に摂取したリすると、胃壁などを荒らしてしまうことがあります。

特に、生の場合は殺菌効果も強いため、アリシンなどがそのまま腸に到達すると、

腸内の善玉菌も殺菌してしまうことがあります。

その結果、腸内菌叢が乱れ、下痢や便秘などの不調を招くこともあります。

 
さらに気をつけたいのは、にんにくの「血液サラサラ効果」です。

アリシンには血液を固まりにくくする作用があり、動脈硬化などの予防には最適なのですが、

出血傾向が高まるという面もあります。

そのため、手術前や出産前、ワルファリンなどの抗血液凝固剤を処方されている人は

食べないようにしましょう。

歯科治療を受ける予定がある人も、口臭対策の点だけでなく

出血防止の観点からにんにくを避けた方が無難です。

 
また、実験での報告例ですが、子宮収縮作用を示唆するものもあります。

妊娠中の女性がにんにくやにんにくサプリメントを常用するのは

やめておいた方が良いでしょう。