お酒を飲んだら次の日は“しじみの味噌汁”。二日酔いに効くともいいますね。

しじみには飲酒で受けた肝臓のダメージを補う力がある、と昔から言われてきました。

では、しじみの何がどのように効果的なのでしょうか?

ここでは、しじみが肝機能の回復に効く理由や、

逆効果になるケースなどについて、わかりやすく解説します。

肝機能にしじみが良い理由

しじみが肝臓に良いといわれる理由は、主に2つあります。

1つは、たんぱく質の合成をスムーズにすること、

もう1つは、解毒(特にアルコールの代謝)を高めることです。

それぞれ詳しく見てみましょう。

たんぱく質合成の促進

しじみが肝機能を助けてくれるという一番の理由は、“必須アミノ酸”にあります。

アミノ酸には20種類あり、その組み合わせによって様々なたんぱく質が作られます。

このうち、体内で必要量を合成できず、

食事などの栄養分として摂取しなければならないアミノ酸のことを、

必須アミノ酸といいます。

 

必須アミノ酸の種類は動物によって異なりますが、人間の場合は9種類あります。

肝臓はたんぱく質を合成する臓器ですが、

合成するには材料となるアミノ酸が必要な分だけすべて揃っていなければなりません。

もし、1つでも不足しているアミノ酸があれば、そのたんぱく質を合成することはできないのです。

特に必須アミノ酸は体内で合成することができないので、不足しがちです。

その必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが“しじみ”なのです。

 

では、なぜ飲酒とたんぱく質合成が関係あるのでしょうか?

お酒に含まれるアルコールは肝臓で分解されますが、

その時に活性酸素とアセトアルデヒドという物質が生じます。

これらは体にとって有害な物質で、特に発生源である肝臓の細胞にダメージを与え、

傷つけたり壊したりしてしまうのです。

 

しかし、そこに必須アミノ酸を含めた必要量のアミノ酸が揃っていれば、

肝細胞の主成分であるたんぱく質を合成し、修復することができます。

そのためのアミノ酸供給に、しじみはぴったりなのです。

不足しがちな必須アミノ酸が種類・量ともに、

食品に含まれているかを判断する指標に「アミノ酸スコア」があります。

必要なアミノ酸が揃っていると「100」になりますが、

なんとしじみは“アミノ酸スコア 100”なのです!

 

さらに、肝細胞の再生を促す効果があるアミノ酸“タウリン”や、

たんぱくの合成を補助するミネラルも、

しじみには豊富に含まれています。

つまり、「しじみを摂ると、たんぱく質の合成に必要なアミノ酸やミネラルを補えるので、

飲酒でダメージを受けた肝臓の修復をスムーズに行える」ということが、

“しじみが肝臓によい”といわれる理由の1つなのです。

しかも、しじみは脂肪分をほとんど含まず、消化・吸収に優れています。

肝臓に負担をかけずに済むのも、うれしいポイントですね。

アルコールの代謝

しじみには多くのアミノ酸がバランスよく含まれていますが、

そのうちの“アラニン”“グルタミン”には、

アルコールの代謝を高めるという働きがあります。

中でもアラニンには、アルコール分解の過程で発生するアセトアルデヒドを、

さらに分解する際に必要な酵素の量を増やす働きがあります。

このため、アセトアルデヒドの分解が促進され、

血液中の濃度が著しく低下することが確認されています。

 

ラットを使った実験では、分解速度が通常の1.3倍にもなったそうですよ。

アセトアルデヒドは二日酔いの元になる物質ですから、

しじみを摂ると予防することができますね。

 

さらにアラニンは、

このアセトアルデヒドの分解に関係する“オルニチン”の活性にも影響を与えています。

また、アラニンとグルタミンには、

アルコールがDNA合成を阻害することを抑制し、

肝細胞の損傷を修復する作用があることが知られています。

DNAは細胞にとって不可欠なものですから、

アルコールの影響を少なくしてくれることは、

肝臓の再生につながるというわけです。

 

他にも、胆汁の分泌を促すアミノ酸のチアミンやタウリン、コハク酸なども含まれています。

胆汁は肝臓で処理された有害物質の排出先なので、

胆汁の分泌が促進されるということは、

肝臓での解毒がスムーズに行われることとなり、

肝臓の負担を軽くすることにつながります。

 

しじみと他の食品における栄養素の比較

しじみにはアミノ酸をはじめ、肝機能をサポートする栄養素が豊富に含まれています。

例えばビタミン類。

特に、ビタミンB2、B12は脂肪の代謝を助け、

脂肪肝の進行を予防したり、肝機能を高めたりする効果があります。

中でもビタミンB12は微生物によって合成されるため、

植物性の食材から摂取することができないビタミンです。

また、カルシウムや鉄などのミネラル類が多い点も、しじみの特徴です。

こういった栄養素は、しじみ以外の貝類も持っているのでしょうか?

数値を比べてみましょう。

表1 肝臓に良い栄養素の比較(文部科学省 日本食品標準成分表より抜粋)
食品名必須アミノ酸(㎎)        アミノ酸(㎎) ビタミン  ミネラル(㎎) 
トリプトファンリシンメチオニンフェニルアラニントレオニンバリンロイシンイソロイシンヒスチジンアラニングルタミンビタミンA
(カロテン)
ビタミンB2ビタミンB12カルシウム
しじみ75400150230310300380250120440680120μg0.25mg62.4μg130mg5.3mg
あさり5738013020025024037022011038081022μg0.16mg52.4μg66mg3.8mg
はまぐり6137013018022024037022013047076025μg0.16mg28.4μg130mg2.1mg
牡蠣584001402202602503702201303608506μg0.14mg28.1μg88mg1.9mg

 

まず、肝機能アップの重要な要素である“必須アミノ酸”について見てみましょう。

驚くべきことに、主な貝類と比べても、9種類のうち8種類で含有量を上回っています。

ヒスチジンではカキの含有量の方が多いですが、栄養価が高いといわれるカキでさえ、

アミノ酸スコアは79しかありません。

いかにしじみのアミノ酸バランスが良いか、

わかっていただけると思います。

 

その他に、しじみには脂肪肝を予防するビタミンB2やビタミンB12も多く含まれていますね。

牛肉や豚肉などの肉類もアミノ酸スコアは100ですが、

ビタミンB12の含有量はしじみの2%以下です。

アミノ酸組成以外の面でも、

肝機能アップに関してしじみは優れているのです。

 

また、肝機能に障害があると、胆汁の分泌や活性型ビタミンDの産生が低下します。

この結果としてカルシウムの吸収が悪くなり、

血液中のカルシウムイオンが減少します。

これを補うため、骨や歯から過剰にカルシウムを溶かし出し、

必要でない細胞にまでカルシウムが

運び込まれてしまいうという現象がおこってしまいます。

これを防ぐには、カルシウムを補給して、

血液流の濃度が低下しすぎないように注意することが必要です。

しじみは、カルシウムの供給源として定評のある牛乳よりも多くのカルシウムを含んでいます。

 

一方で、肝臓は油溶性ビタミンの貯蔵庫でもあるので、

肝臓に障害があるとこのビタミンが不足してきます。

しじみには他の貝類に比べて非常に多くのビタミンA(油溶性)が含まれており、

その量は牛乳の20倍、牛肉(肩ロース)の40倍にもなります。

1つ1つの栄養素を見ればしじみより優れた食材もありますが、

肝機能アップという機能性を総合的に見ると、

しじみは優等生といえるでしょう。

お酒を飲みすぎたり、疲れを感じたりするときは、

積極的にしじみを摂ると早く回復できますね。

 

食べるときの注意

しじみ料理といえば“味噌汁”を連想する人も多いことでしょう。

実際、しじみの旨味は味噌の風味を引き立て、

相乗効果によって、よりおいしくなるといわれています。

ですが、“塩分”には注意が必要です。

 

味付けの濃い料理はおいしく感じますし、ついついご飯などの主食も食べ過ぎてしまいますね。

この“食べ過ぎ”は肝臓にとって非常に良くありません。

肥満や脂肪肝の原因となるだけでなく、

栄養の貯蔵庫である肝臓を過剰に働かせる結果につながってしまうからです。

 

また、塩分の調節を行うのは主に腎臓ですが、

肝臓は腎臓と深い関りを持っています。

例えば、肝炎で黄疸が生じたり、肝硬変が進行したりすると、

腎臓の機能が低下して腎不全を起こしてしまうのです。

こうなると、1日の塩分摂取量は5g以下に制限され、

味気ない食生活を送ることになってしまいますね。

 

まずは、薄味に慣れましょう。

塩や醤油の代わりにスパイスや酢、レモン汁などを利用してみてください。

薄味が気にならなくなりますよ。

なお、ラーメンやうどんならスープを残すことで、

塩分摂取量を抑えることができますが、

しじみの味噌汁などの汁物では大事な栄養素が汁に溶けだしていますので、

飲み干したいですよね。

そういう時はだしを十分に効かせましょう。

旨味成分の効果で、味噌の量を少なくすることができます。

減塩タイプの味噌や醤油の利用もおすすめですよ。

 

しじみを摂取してはダメな場合

こんなに肝臓に良いしじみなのに、注意が必要なケースもあります。

それは、C型慢性肝炎や肝硬変などの肝臓病の場合です。

しじみの何が良くないのかと言うと…“鉄”なのです。

表1にあるように、しじみには多くの鉄が含まれています。

基本的に、鉄は動物にとって必要なミネラルの1つですが、

酸化されやすい性質をもつため、体内でも厳重に保管され、

その量はコントロールされています。

 

肝臓の大切な役割の一つに、“鉄の貯蔵”があります。

ですが、肝機能が低下していると正常に処理ができなくなり、

鉄が蓄積されやすくなることがわかっています。

特に、C型肝炎を起こすウイルスには、過剰に鉄を貯め込む性質があります。

鉄分補給用のサプリメントなどは厳禁です。

しじみだけでなく、肉や赤みの魚なども鉄分が豊富なので避けた方が良いでしょう。

 

では、鉄が増えすぎるとどうなるのでしょうか?

まず、肝炎などの治療薬“インターフェロン”が効きにくくなります。

さらに、余分な鉄が酸化されて活性酸素が大量に発生し、

その結果、肝炎を進行させてしまうことになるのです。

 

逆に、鉄分を制限することで肝機能が改善するという事例もあります。

食事制限などで故意に鉄の摂取を控え、肝臓内の鉄を減らす治療法です。

このように、しじみはどんな状態の肝臓にも効果があるわけではありません。

病気などで肝機能が低下している場合には、

悪影響を与える可能性が高いのです。

「しじみが肝臓に効果がある」のは、C型肝炎や肝硬変などの肝臓病に至る前の、

飲酒などによる「一時的な肝機能サポート」に対してなのです。

 

ただ、「たまにはしじみや肉などを食べたい」という人もいると思います。

その場合は、次のように食べ合わせを工夫しましょう。

一緒に摂ると良いもの

 緑茶、紅茶などタンニンを多く含むもの

一緒に摂ると良くないもの

 柑橘類(みかん、オレンジ、レモン)、イチゴ、キウイ、ピーマン、ゴーヤなどのビタミンC、クエン酸を多く含む果物や野菜

 

お茶類に含まれるタンニンには鉄分の吸収を阻害する働きがあるので、

しじみなどを食べるときや食後に飲むようにしましょう。

逆に、ビタミンCやクエン酸などは鉄分の吸収を高めてしまいます。

これらは水溶性の物質なので、

野菜ならよく茹でれば溶けだしてしまうので安心です。

 

民間療法としての歴史が長い「しじみとお酒」の関係も、

現代では科学的に立証されています。

ただし、弊害があるケースもわかってきたので、注意も必要ですね。

しじみの肝臓への効果を正しく理解して、上手に食生活に摂り入れていきましょう。