牡蠣は世界中で親しまれている食材です。

特に、中国では肝臓の漢方薬として用いられ、日本でも昔から『牡蠣は酒毒を消す』といわれて、

その薬効を日頃の食事にも活かしてきました。

では、牡蠣の何が肝臓へ効果をもたらしているのでしょうか?

ここでは、牡蠣が肝臓に効く理由とともに、効果的な摂り方や、

注意点も併せて解説しています。

肝機能に牡蠣が良い理由

肝臓に牡蠣が良い理由は、「肝臓を支えるための栄養素が豊富」という点につきます。

これによって、

  • 肝臓の処理能力が高まる
  • 肝臓の修復を助ける
  • 肝臓のエネルギー源を供給する
  • 肝臓の線維化を抑制する

といった4つのメリットが得られるのです。

それでは詳しく見ていきましょう。

肝臓の処理能力が高まる

これに作用する牡蠣の成分は“タウリン”です。

肝臓には過剰なコレステロールや中性脂肪、重金属などを胆汁中に排出したり、

アルコールなどの有害物質を無害化(解毒)したりする働きがありますが、

タウリンには、これらを行う酵素の働きを活発にする作用があります。

肝臓に運ばれてくる不要物や有害物質を早く処理できれば、

そのぶん肝臓の負担を和らげることができますね。

特に、アルコールを解毒する過程で生じる“アセトアルデヒド”は、

体内にとどまると二日酔いの原因になります。

牡蠣を食べて肝機能をサポートすることで、

飲酒による弊害が軽くなることを昔の人は経験的に知っていたわけですね。

肝臓の修復を助ける

肝臓は体内の化学工場ともいわれ、様々な物質の分解や合成を行う器官です。

しかし、このとき、肝臓は“働く”という負担だけでなく、

大きなダメージを受けています。

なぜかというと、アルコールなどを分解するときに生じる有害な“活性酸素”により、

肝細胞が傷つけられるためです。

損傷あるいは破壊された肝細胞の数が多くなればなるほど、

肝臓の機能は低下し、正常な部位の負担は増していきます。

そして、結果的に肝臓全体が疲れたり、損傷したりしてしまうのです。

でも、肝臓は再生能力が高い臓器です。

自己修復力が高いので、日常的な暴飲暴食など、よほどのダメージを与えない限りは問題ありません。

 

しかし、それも修復するための材料がそろっていれば…の話です。

どんなに優秀な大工でも、木材が揃っていなければ家を建て直すことは不可能ですからね。

肝臓の場合、修復の材料となるのは“アミノ酸”です。

別名“海のミルク”とも呼ばれる牡蠣には、

良質なたんぱく質やアミノ酸が豊富に含まれているのです。

アミノ酸は、たんぱく質を構成する物質です。

たんぱく質は物質を切ったりくっつけたりする酵素にもなりますから、

細胞修復の大切な材料になります。

 

また、酵素が働くときにビタミン類が必要なこともあります。

牡蠣にはビタミン類も豊富に含まれているので、この点のサポートにも役立つわけです。

牡蠣を食べてアミノ酸やビタミン類を十分に供給すると、ダメージを受けた肝臓の修復が速やかに

行われ、肝機能の回復に役立つというわけですね。

肝臓のエネルギー源を供給する

肝臓はとてもたくさんの機能を持っているため、必要とするエネルギーも膨大です。

そのエネルギー源となるのが“グリコーゲン”。

グリコーゲンとは動物の体内で貯蔵できるエネルギー源です。

その最も大きな貯蔵場所が肝臓で、

蓄えられたグリコーゲンを必要に応じてエネルギーとして供給しています。

 

そして、当の肝臓もグリコーゲンを大量に消費しながら、

解毒や代謝などを行っているわけです。

さらに、グリコーゲンは“グルクロン酸抱合”の原料としても使われています。

グルクロン酸抱合とは、肝臓で行われている解毒の仕組みの1つで、

有害な物質を体外に排出するときに行われます。

グリコーゲンが代謝されてグルクロン酸の原料になるので、

肝機能を高める材料にもなっているわけですね。

肝細胞の線維化を抑制する

これに関係する栄養素は“亜鉛”です。

亜鉛の1日の必要摂取量は10~15mg ですが、

生牡蠣にはなんと100g中13.2㎎も含まれています。

食品中でもダントツの含有量なんです。

亜鉛は生体内の300 種類以上の酵素の活性化に関係し、

免疫、味覚などにも関わる重要な栄養素です。

細胞分裂や核酸代謝、傷の回復といったことにも関係するので、肝臓の回復にも効果があるのですが、

他にも、肝炎が進行した際におこる線維化を抑制する働きがあるのです。

線維化した細胞は肝細胞としての機能を失い、固くなっていきます。

線維化が進むということは肝機能が低下していくことを意味し、

さらに進行すると肝硬変になります。

 

しかも、線維化した細胞は再生力も失ってしまうため、

肝臓の回復が見込めない状態に陥ってしまうのです。

しかし、亜鉛にはこの線維化を抑制する働きがあり、

肝炎から肝硬変への進行を遅らせる効果があります。

このため、最近では亜鉛の投薬による抗線維化治療も研究されています。

 

他の食材との比較

それでは、牡蠣がもつ優れた栄養素を他の食材と比べてみましょう。

タウリン

タウリンは軟体動物に多く含まれる物質で、貝類にも多く含まれます。

牡蠣は貝類の中でも豊富にタウリンを含み、

およそ1000㎎(分析機関による差あり)といわれていますので、

トップクラスです。

表1 タウリン含有量の比較(食品100g中)
食材タウリン(㎎)
真ダコ900~1670
サザエ1500
カキ70~1180
ホタテ670~1000
カツオ160~830
ミル貝730
やりいか700
ブリ180~670
はまぐり550
あさり210~420
スルメイカ360
真アジ230
車海老210
大正海老215
サンマ180
イワシ170
サバ170

アミノ酸、たんぱく質

貝類は脂質が少なく、カロリーが低いわりにアミノ酸やたんぱく質が豊富な食材です。

中でも牡蠣はヘルシーな食材の最有力候補!

表2 エネルギー・たんぱく質・脂質量などの比較(食品100g中)
 エネルギーたんぱく質脂質
(kcal)(g)(g)
牡蠣606.61.4
牛肉(肩ロース、赤身)21219.116.3
しじみ515.61.0

 
たんぱく量で考えると、牛肉などの肉類は牡蠣の3倍ほど含んでいますが、

脂質は牛肉の10%以下と圧倒的に少ないんです。

脂肪は肝臓に負担をかけますし、脂肪肝の原因にもなります。

同じ量のたんぱく質を摂取したとしても、

牡蠣なら低カロリー・低脂質で済みますね。

 

肝機能が低下している人にとって、

牡蠣は優れたアミノ酸やたんぱく質の供給源といえるでしょう。

一方で、同じく貝類の“しじみ”は、牡蠣よりもアミノ酸バランスの良い食材ですが、

非常に小さく、食べにくいといった難点がありますね。

例えば、しじみの味噌汁1杯に10粒入っていたとして、

その重さは6g程度ですが、牡蠣なら小さめの1粒でも約16g。

しじみには劣りますが、牡蠣もアミノ酸バランスに優れた食材です。

しかも、たんぱく質は牡蠣の方が豊富です。

バランスの劣る点は、摂取量でカバーできますね。

亜鉛

肝臓の再生をサポートし、線維化を抑制する“亜鉛”は、肝臓にとって重要な栄養素です。

食品の亜鉛の含有量を見てみましょう。

表3 食品中の亜鉛量ランキング(食品100g中)
ランキング食材名
1魚介類/かき/くん製油漬缶詰25.4
2穀類/こむぎ/[その他]/麦はいが15.9
3魚介類/かき/養殖、水煮14.5
4魚介類/かき/養殖、生13.2
5魚介類/(かつお類)/加工品/塩辛11.8
6魚介類/あわび/水煮缶詰10.4
7調味料及び香辛料類/パプリカ/粉10.3
8魚介類/ぼら/からすみ9.3
9肉類/うし/[加工品]/ビーフジャーキー8.8
10肉類/ぶた/[その他]/スモークレバー8.7

 
これは全食材を対象としたランキングなので、

通常では口にしない“小麦ふすま”などもランクインしていますが、

家庭料理で使う食材をみていくと、牡蠣がトップですね。

この他にも日常的な食品に絞ってあげると、

15位がパルメザンチーズ(7.3㎎)、16位の煮干し(7.2㎎)、

17位タイの鯉・ココア(7㎎)、そして19位タイの豚レバー・松の実・マイタケ(6.9㎎)と続きます。

牡蠣がどれだけ亜鉛の豊富な食材か、お分かりいただけたことでしょう。

上手に利用していきたい食材ですね。

 

食べるときの注意点

こんなに栄養価の高い牡蠣ですが、食べるときには注意が必要です。

それは、牡蠣が

  1. 細菌・ウイルス感染の危険性がある食材である
  2. 食べない方が良い場合がある

という点です。

その原因や理由など、詳しく見てみましょう。

細菌・ウイルス感染の危険性【食中毒、A型肝炎】

どんな食材もそうですが、細菌やウイルスが付着あるいは蓄積されていることがあります。

特に二枚貝では比較的多く見られ、

生で食する機会がある牡蠣は、特に注意が必要です。

食中毒

いわゆる「牡蠣にあたった」という状態です。

腹痛、激しい下痢や嘔吐などが主な症状で、発熱することもありますが、

原因には、貝毒によるものと細菌・ウイルス感染によるものがあります。

貝毒は、有毒なプランクトンを捕食した牡蠣などの貝類を、

人が食べることで食中毒を起こすものです。

 

しかし、一般的な食中毒は、細菌(腸炎ビブリオ)やウイルス(ノロウイルス)によるものでしょう。

腸炎ビブリオ感染は夏に多く、食後2~36時間くらいで発症しますが、

ノロウイルス感染は冬が中心で、食後12~48時間くらいで症状が出ます。

腸炎ビブリオには抗菌薬がありますが、通常数日で回復しますので、投薬しないことが多く、

ノロウイルスには治療薬がないので、自然回復を待ちます。

 

いずれの場合も大切なのは、絶対に“下痢止め薬を使用しないこと”です。

下痢は体内の細菌やウイルスを排除しようとする大切な防衛機能だからです。

脱水症状に注意して、こまめに水分を補給しながら回復を待ちましょう。

A型肝炎

肝炎にはウイルスによって引き起こされるものがありますが、

食品由来で起こる場合は“A型肝炎ウイルス”が原因です。

東京都福祉保険局によると、感染源は日本国内で発生した事例の大部分で特定されていませんが、

井戸水やカキなどの二枚貝が推定される事例があるそうです。

しかし、アメリカではメキシコ産冷凍イチゴを原因とするケースも報告されており、

海産物に限ったことではありません。

 

A型肝炎に感染すると免疫ができるので、2度は感染しませんが、

衛生的な環境で育った世代の人は免疫を持たないことが多く、

汚染された食品や海外などでウイルスに感染し、

肝炎を発症するケースが増えています。

 

A型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均30日で、急性肝炎を発症し、風邪のような状態に続いて、

関節痛・下痢・発熱(38℃以上)・倦怠感・嘔吐などの症状が出てきます。

黄疸が出始めるころには回復にむかっていることが多いようです。

感染初期は点滴などを行いますが、安静にしていれば、

だいたい1~2か月、遅くても2~3か月で肝機能が戻ってきます。

しかし、まれに症状が急激に進行する“劇症肝炎”を発症することもあるので

油断しないようにしましょう。

感染を防ぐには?

とにかく「生で食べない」。これが原則です。

牡蠣なら中心温度85℃で1分以上(できれば5分)加熱して食べた方が安全です。

特に、風邪や疲れなど体力が低下している人は感染のリスクが高いですから、

必ずよく加熱したものを食べましょう。

どうしても生牡蠣を食べたいときは、

清浄海域または条件付指定海域で育成されたことが明記された“生食用”を選ぶようにしましょう。

 

また、A型肝炎ウイルスは、食材だけでなく生水なども感染の危険があります。

特に、海外などでは注意しましょう。

ミネラルウォーターや加熱調理済みの殺菌されたものを飲食し、

氷や水しぶきにも気を付けましょう。

食べない方が良い場合

牡蠣はミネラル豊富な食品で、亜鉛のほかにもカルシウムや鉄などたくさん含まれています。

しかし、その中で気を付けなくてはならないのが“鉄”です。

牡蠣には100g中1.9㎎の鉄分が含まれ、

健常者にとっては優れた供給源となりますが、

鉄を蓄える肝臓に疾患がある人にとっては、

多すぎる鉄分は負担を与えてしまいます。

 

なぜなら、鉄は酸素と結合しやすく、その際に生じる活性酸素が肝臓を傷つけてしまうからです。

その結果、さらに肝炎が進行してしまうことになります。

特に、C型肝炎の人は牡蠣の摂取を控えた方が良いでしょう。

C型肝炎ウイルスには鉄分を貯め込む性質があり、

この過剰な鉄が活性酸素を大量に発生させるだけでなく、

薬(インターフェロン)を効きにくくさせてしまうのです。

牡蠣だけでなく、貝類や肉類には鉄分が豊富な食材が多いので、

摂取は控えめにしておきましょう。

 

効果的な摂り方

前述のように肝疾患さえなければ、牡蠣には肝機能をサポートし、

肝臓の回復を早めたり、線維化を抑制したりする効果がある優れた食材です。

体調に合わせ、適量を摂取していきましょう。

でも、細菌やウイルス感染の可能性もあるので、

できるだけ火をしっかり通してから食べるように心掛けてください。

おすすめは「牡蠣のアヒージョ」。

  1. 厚手の小鍋にオリーブオイルをたっぷり入れ、中火にしてニンニクのみじん切りを入れます。
  2. 続いて牡蠣、エリンギ・シメジなどのキノコ類、お好みの野菜類を入れ、十分に火を通します。
  3. 塩コショウをして味を調えます。お好みで、バジルなどのハーブを加えると風味が豊かになりますよ。

 

ポイントは最後に塩コショウする点です。

塩分の摂りすぎは肝臓に良くないので、最後に素材の表面に味をつけ、中まで染み込まなくても

おいしく感じられるようにします。

 

また、キノコ類は食物繊維が豊富なので、脂肪の吸収を抑えますし、牡蠣の旨味も吸ってくれます。

オイルに抵抗がある人もいるかもしれませんが、オリーブオイルには血中コレステロールを下げる

作用があり、脂肪肝の予防にも適しています。

肝疾患があって鉄分の摂りすぎが気になるなら、牡蠣と一緒に渋めの緑茶や紅茶を飲みましょう。

茶の成分“タンニン”が鉄の吸収を妨げてくれますよ。

オイルは水より高温になるため、牡蠣を安全に調理することにもつながります。

おいしく食べて肝機能サポートにぜひ役立ててください!