そばは、主食となる穀類の中では珍しい“濃い色味”が特徴ですね。

この色味とともに、あの独特の喉越しや、昔から食べられてきたシチュエーションも、

実は肝臓を助ける働きと関係があったのです。

ここでは、そばが肝臓に良い理由と、効果的な摂り方について解説しています。

 

そばの肝臓への効果

最近では、そばは健康食として注目を集めており、

海外では「ラーメンよりヘルシーな麺類」として人気がある食材です。

確かに油っこいスープが食欲をそそるラーメンと違って、

「ざる蕎麦」「かけ蕎麦」などのシンプルなそばは

脂質も炭水化物も低く、非常に低カロリーですね。

しかも、そばはGI値が低い食品でもあります。

低GI値の食品は、食後の血糖値を急激に上昇させないため、

太りにくい食品として注目され、

「低GIダイエット」としてブームにもなりました。

このような低カロリーや低GI値の食品は、

代謝機能を持つ肝臓の負担を和らげることにつながります。

しかし、そばが持つ肝臓への効果は、それだけではありません。

そばには、

  • ルチン
  • コリン
  • 不溶性食物繊維
  • タンパク質
  • ビタミンB群
  • 炭水化物

といった肝臓の負担を和らげたり、働きを助けたりする成分が多く含まれています。

それでは、1つずつ見ていきましょう。

ルチン

ルチンはフラボノイドの1種で、強力な抗酸化作用をもつポリフェノールです。

柑橘類の果皮やアスパラガスなどにも含まれますが、

そばの実には特に多く含まれています。

以前は“ビタミンP”とされていましたが、

現在ではビタミンとしては扱わず「ビタミン様物質」に分類されています。

ルチンには様々な健康効果があるとして注目されおり、

抗炎症効果や血流改善効果については数多くの論文がありますが、

肝臓への効果として注目されるのは、ルチンの抗酸化力です。

抗酸化力とは体内で発生する不要な活性酸素を除去する作用のことで、

過剰な活性酸素が細胞やその内部のDNA(遺伝情報)などを傷つけるのを防いでくれます。

 
肝臓は体内でも多くの代謝機能をもつ臓器なので、

その過程で大量の活性酸素が発生しています。

そのうえ、お酒を飲む人の場合、アルコールを無毒化するために分解すると、

さらに大量の活性酸素が発生してしまうのです。

特に、長期にわたる飲酒習慣などによって肝臓の細胞が繰り返し破壊されてしまうと、

肝臓は再生能力を失っていき、細胞が線維化してしまいます。

これが肝炎の進行した「肝硬変」と言われる状態です。

肝硬変をおこした肝臓は機能が著しく低下し、健康に大きな影響を及ぼしてしまいます。

飲酒が肝臓へ悪影響を及ぼすと言われるのはこのためで、

活性酸素を少しでも速やかに除去することが重要だということを

わかっていただけると思います。

これに有効なのが「ルチン」なのです。

 
このルチンの効用は、習慣的に「蕎麦前」として古くから利用されてきました。

蕎麦前とは、そばを食べる前に軽くつまみながらお酒を飲むことを言います。

江戸時代に始まったと言われますが、

こうしてそばが茹で上がるのを待っていたというのですから粋ですね。

蕎麦屋でお酒を飲むことで、肝臓を活性酸素から守るルチンを補給できていたわけです。

同じ麺類でも、うどん屋ではお酒のイメージがあまり湧かないですよね。

蕎麦屋とお酒の関係にはきちんと裏付けがあったというわけです。

コリン

そばには「コリン」という栄養素が含まれていて、

これが不足すると脂肪肝になることが知られています。

そのため、ルチン同様、以前はビタミンとして扱われていましたが、

現在では「ビタミン様物質」の位置づけになっています。

 
コリンは体内で重要な働きをする次の3つの物質の原料として用いられています。

  • 細胞を守る膜の成分“レシチン”
  • 血管を広げて血圧を下げる神経伝達物質“アセチルコリン”
  • 肝臓や脳に多く存在し、これらを健康に保つ“S-アデノシルメチオニン”

コリンは体内でタンパク質から合成できる物質でもあることから

日本での栄養学的価値は低いのですが、アメリカでは必須栄養素と定められ、

成人男性(14歳以上)で1日あたり550mgの摂取が推奨されています。

これは、コリンの欠乏症は起こりにくいものの、

不足すると脂肪肝・動脈硬化を起こしやすくなったり、

精神の安定や記憶障害(アルツハイマー型認知症など含む)との関連性が

示唆されたりしているからです。

 
特に、肝臓においては動物実験などから脂肪肝の発症に密接な関係を持つことが

古くから確認されていました。

コリンが原料となって合成されるレシチンは細胞膜の成分ですが、

水に溶けない脂肪を運搬する役割も担っています。

中性脂肪を作る肝臓から、これを運び出すのもレシチンの役割です。

もしもレシチンが不足すると、肝臓から中性脂肪を運び出せずに溜まってしまいますね。

これが「脂肪肝」の原因です。

レシチンが不足しないよう、その原料であるコリンをそばからも補給しておきましょう。

不溶性食物繊維

やわらかい食感からは想像しにくいのですが、そばには食物繊維が豊富に含まれています。

食物繊維には水溶性と不溶性があり、

どちらも便秘を予防し、腸の働きを整える効果があります。

さらに、脂質や糖質を多く含む食品を摂った時に、これらが体に吸収されるのを防ぎ、

速やかに排出されるのを手伝ってくれます。

脂質や糖質の代謝を行うのは肝臓ですから、

吸収を阻害することで肝臓が余計に働かなくて済み、休ませてあげられるわけですね。

 
そばには不溶性食物繊維が豊富ですので、油っこい食事を摂る時にはお勧めです。

 

不溶性食物繊維の含有量
食材名100g中の量
そば(ゆで)1.5g
うどん(ゆで)0.6g
ごはん(精白米)0.3g

「天ぷら」をトッピングするなら、うどんではなくそばがいいですね。

タンパク質

そばにはタンパク質が100g中12gほど含まれていますが、

その構成が優れていることも注目したい点の1つです。

食品中のタンパク質(=アミノ酸)組成のバランスを示す指標に

「アミノ酸スコア」というものがあります。

数値が高いほどバランスが良いことを示しますが、そば(全層粉)は満点の100点。

これは穀類の中ではトップクラスの数値です。

特に、私たちの体に欠かせない“必須アミノ酸”である

「リジン」「トリプトファン」を多く含みます。

しかも「リジン」はパンや白米からは摂取しにくいものですが、

そばなら必要量を摂ることができるのです。

 
さて、なぜタンパク質が肝臓にとって重要なのかというと、

理由はタンパク質を分解したときに生じるアミノ酸にあります。

このアミノ酸は体内で様々に利用されますが、

その一つが酵素を生成する材料になるというものです。

肝臓はたくさんの働きをもっているため、必要とする酵素の数も量も膨大です。

ですから、十分な量のアミノ酸を補給してあげることは、

肝臓での様々な反応をスムーズに進めることにつながるわけです。

反応が円滑であれば肝臓の負担も少なくて済み、

他に必要とされる解毒などの機能に余力を回すことができるので、

体全体の健康にもメリットがありますね。

ビタミンB群

肝臓に効果があるビタミン類にはB群があげられますが、

これもそばには豊富に含まれており、小麦粉や精白米の2倍以上に相当します。

特にビタミンB1は豊富で、

「蕎麦がき」なら1人前で成人1日あたりの必要量の4割を補給できます。

ビタミンB群は炭水化物・脂質・タンパク質などの代謝に関わるので、

これらをスムーズに行うことで肝臓の働きをサポートしてくれるわけですね。

炭水化物

主食であるご飯やパンはデンプン質で、体内ではジアスターゼなどの酵素によって分解され、

最終的にブドウ糖になります。

ただし、お腹いっぱいに食べてしまうと、この分解がうまくいかず、

いわゆる“胃もたれ”を起こすことがあります。

ところが、同じデンプン質でもそばは他の穀類よりもジアスターゼによる消化吸収が早く、

糊化しやすいために胃もたれしにくいことがわかっています。

糊化とは“アルファ化”ともいい、

簡単にいうと生米に水分と熱を与えて炊くことで柔らかいご飯のような状態にすることです。

糊化するとデンプンは消化・吸収しやすい状態になります。

そばは麺類の中でものびやすいですね。

これにも糊化のしやすさが関係しています。

消化・吸収しやすいということは胃腸だけでなく肝臓での代謝にも影響しますので、

そばの炭水化物は肝臓にやさしいと言えますね。

 

上手な摂り方

肝臓をサポートする成分を多く含むそばですが、その摂取には次の3つの注意が必要です。

そばアレルギーに注意

そばアレルギーの人は決して摂ってはいけません。

食物アレルギーの中でも“そば”は重篤な症状を引き起こす食材です。

気をつけましょう。

色の濃いそばを選ぶ

今回紹介したルチン、食物繊維などの成分は、そばの実の外側部分ほど多く含んでいます。

この部分はそばの種類によって含有量が異なり、見た目の色も変わります。

つまり、「白っぽいそば」ほど含有量が低く、「黒っぽいそば」ほど高くなるわけです。

「黒っぽいそば」は「田舎そば」「十割そば」とも呼ばれ、

そばの実の殻を除いてから甘皮ごと挽いたそば粉(全層粉)から作られています。

これに“つなぎ”として小麦粉を混ぜていき、そば粉の割合が下がっていくと、

そばの色味が白っぽくなっていきます。

「二八そば」は一般的に“そば粉8:小麦粉2”で作られたものです。

ですから、そばの有効成分を利用したいのであれば、

黒っぽいそばを選んで食べる方が肝臓に効果的ということになります。

茹で汁(蕎麦湯)も利用する

そばに含まれるルチン、コリン、ビタミンB群と、タンパク質の約半分が水溶性の物質です。

そのため、そばを茹でると茹で汁に栄養成分が溶け出してしまいます。

これを捨ててしまってはもったいないですね。

「蕎麦湯」として飲むことをおすすめしますが、

地方によっては馴染みのない風習かもしれません。

しかし、お酒を飲んだ時は昔から「蕎麦湯を飲むと悪酔いしない」と言われていたくらいです。

蕎麦湯として飲むのに抵抗がある場合は、他の料理の水分として混ぜて利用しましょう。

せっかくの成分ですから、しっかり摂って肝臓をサポートしてあげましょう。