体の不調を示すサインとして現れる「頭痛」。

風邪や寝不足など一過性のものもありますが、

中には頻繁に頭痛がおこるために悩んでいる方も多いと思います。

そして、そんな頭痛の中には肝臓の不調によって現れるものもあるのです。

ここでは肝臓の機能低下や病気によって生じる「頭痛」について、解説しています。

 

頭痛の実態

頭痛は誰にでも起こるものであり、非常にありふれた症状の1つです。

片頭痛やストレスによって引き起こされる慢性的な頭痛、

風邪によるものや寝不足による一過性のものなど様々です。

かき氷のような冷たいものを食べただけでも頭が痛くなることがありますよね。

また、頭痛の現れ方にもいろいろあって、

左右や前後の一部だけが痛んだり、締め付けられるように全体が痛んだり、

あるいは寝起きだけ、緊張時だけ現れるという人もいます。

 
しかし、多くの場合、頭痛のために医療機関を受診するのは

“頭が割れるように痛い”といった重度のケースがほとんどで、

病院へ行ったとしても風邪の治療を目的として受診した際に頭痛薬を受け取る程度です。

日本人の3 ~ 4人に1人が「頭痛持ち」と言われるほど

慢性的な頭痛を抱えている人が存在するのに、

その多くの人が自己判断で頭痛薬などを飲み続けている現状を垣間見ることができます。

そして、自己判断で頭痛と付き合っている人の中には、

内臓の異常に原因があるケースも考えられるのです。

その代表例が「肝臓」です。

肝臓と頭痛の関係

では、お腹にある肝臓から遠く離れた頭に痛みが生じるのはなぜでしょうか?

その答えの1つは肝臓とつながっている“神経”にあります。

肝臓につながる神経は交感神経副交感神経といった自律神経系で、

例えば運動時に筋肉などで大量に消費されるエネルギーを補うため、

肝臓で貯蔵しているグリコーゲンを分解させてエネルギーを供給するなどを行っています。

自律神経系は自分の意志とは無関係に働く神経で、

多くは運動に備えたり、呼吸、消化、体温調節(発熱、発汗)などのように、

生命活動に深く関わる機能を支配していて、内臓と深い関係にあります。

このため肝臓の病気などによって異変を生じると、

肝臓につながる自律神経が刺激されて緊張状態になり、

神経を介してつながっている他の部位に影響を与えます。

その結果、遠く離れているにも関わらず、“肝臓の異常で頭痛が起こる”と考えられています。

 
もう少し詳しく見てみましょう。

肝臓を支配する神経は、その上部に位置する大胸筋につながっています。

このため、肝臓に異常が生じると神経を通じて大胸筋とつながる横隔膜も刺激を受けます。

すると、横隔膜の刺激が背中の筋肉(僧帽筋など)も刺激し、

さらに、上部にある首(頸椎)周辺の神経や筋肉も緊張させます。

この上部頸椎には目・耳などにつながる神経があるため、

肝臓から連鎖してきた刺激が頭痛を引き起こすことになると言われているのです。

また、頭痛と同時に肩こり・めまい・眼精疲労・耳鳴りなどの

症状を訴えるケースも見られますが、これも同様の連鎖によるものと考えられています。

 
そしてもう一つ、肝臓による頭痛の原因と考えられるのが、“血液循環”によるものです。

肝臓は成人で1.2kgほどもある非常に大きな臓器で、

ここを体全体の血液の4分の1が流れていると言われています。

肝臓の病気などによって炎症が起きると、肝臓の中を血液が通りにくくなり、

その結果、他の臓器や筋肉などへの血流も悪くなってしまいます。

この血行の悪さが肩こりなど筋肉の緊張を促し、

上部頸椎へも影響して頭痛がおきやすくなるとも考えられています。

さらに、血行が悪くなると

筋肉などの組織に疲労物質毒素なども溜まりやすくなりますから、

これらが周辺の神経を刺激させ、それが頭部まで伝わる可能性も考えられています。

 
一方で、細菌やウイルスなどの感染による炎症が起きている場合は、

免疫細胞を活性化させてこれらを排除しようと体が働きます。

このとき、免疫細胞が活動しやすい環境を作るために

血管を膨張させて体温を上げる(発熱させる)のですが、

この膨らんだ血管が周囲にある神経を刺激して、

頭部では頭痛として感じられることもあります。

 
いずれにしても、頭痛というありふれた症状から肝臓の異常を見逃さないためには、

頭痛以外の症状にも十分に気を配ることが大切です。

 

頭痛がおきる肝臓の病気

それでは、どのような肝疾患があると頭痛の症状が出やすいのでしょうか?

最も頭痛が見られるのは、肝炎です。

肝炎には自己免疫性肝炎、薬剤性肝炎、アルコール性肝炎などもありますが、

多くは肝炎ウイルスの感染によるものです。

このため、風邪などの感染症と同じように

ウイルスに対抗しようと免疫システムが反応するため、

前項で述べたような発熱に伴う頭痛が見られるわけですね。

 
国立国際医療研究センター「肝炎情報センター」によると、

肝炎ウイルスはA型、B型、C型など5種類が確認されているとのことで、

慢性化しやすいもの、一過性で終わりやすいものなど経過に違いはありますが、

初期の症状は似ていて“風邪をひいたような症状”

発熱、悪寒、だるさ、関節の痛み、頭痛、吐き気、食欲不振などです。

ところが、肝臓はとても働き者なので、

肝炎ウイルスに感染してもすぐに症状が現れるわけではありません。

これを“潜伏期”といい、同センターによると、急性肝炎の場合は3~8週間ですが、

B型やC型では6ヶ月間に及ぶこともあるそうです。

この潜伏期を経て“前駆期”と呼ばれる段階に入ると、

先ほど触れたように頭痛などの“風邪のような症状”が現れます。

この時期は医師でも診察時に風邪と診断してしまうケースも珍しくなく、

肝臓の異常を発見することは難しいと言われています。

しかし、ほぼ同じ時期に現れる褐色尿黄疸が見られると、

肝臓が炎症を起こしていると考えられるため、診断が容易になります。

褐色尿は黄疸よりも先に現れ、尿がウーロン茶のように黒っぽくなります。

一方の黄疸は体が黄色みを帯びる症状ですが、

初期ですと黄色人種である日本人の肌では変化を認めにくいため、

眼球の白目部分を見ると発見が早いようです。

どちらも肝機能障害を示す特徴的な症状ですので、

風邪に似た症状が現れた場合は尿や白目の色の変化にも気をつけるようにしましょう。

ただし、肝炎ウイルスに感染しても自覚症状を示さずに経過する“不顕性”も少なくありません。

この場合は肝機能の多くが失われてから初めて症状が現れます。

自覚症状だけに頼らず、定期的な検査を受けて早期発見に努めることも重要ですね。

 
なお、肝臓の病気には、肝炎の他にも肝硬変肝臓ガンがありますが、

いずれも慢性肝炎から移行するケースが多く、

これらの病気では頭痛・発熱といった初期症状よりも、

クモ状血管腫、手掌紅斑、腹水などの進行した特徴的な症状が見られます。

また、脂肪肝については次項をご覧ください。

 

病気以外の肝臓の影響

前項では肝臓の病気による頭痛について触れましたが、

病気とまで至らなくても肝臓に障害を及ぼし、頭痛を起こしているケースもあります。

ここでは病気以外での影響について見てみましょう。

飲食物の影響

肝臓は実に多くの機能を持った臓器ですが、その1つに代謝があります。

肝臓には、私たちが摂取した飲食物を体内で利用しやすい状態に変え、

必要に応じて供給したり貯蔵したりする機能があるのです。

しかし、大量に摂取すると肝臓は必要以上に働かなければならなくなり、

他の仕事ができなくなってしまいます。

このため、肝臓の重要な働きである解毒作用などが不十分になり、

その結果、体内に有害物質が蓄積していき、頭痛のような不調が現れると言われています。

 
また、飲酒によるアルコールや食べ過ぎによる糖質・脂質の大量摂取は、

肝臓に負担をかけるだけでなく中性脂肪の蓄積を促し、脂肪肝へと発展します。

脂肪肝には際立った自覚症状はないのですが、

血液がドロドロになって血行が悪くなるため、

体中の細胞へ栄養や酸素を供給しにくい状態になります。

このため、疲労感のほか肩こりなどを生じ、

これが悪化して頭痛を感じることもあります。

ストレスの影響

肝臓に限ったことではありませんが、内臓はストレスの影響を受けやすい傾向にあります。

緊張すると「下痢をする」「胃が痛くなる」などの症状は典型的な例ですね。

既に述べたように、肝臓などの内臓器官は自律神経の強い支配を受けています。

自律神経には緊張や不安・イライラといったストレスを感じた時に興奮する“交感神経”と、

リラックスした状態で優位に働く“副交感神経”があります。

交感神経は“動物的に戦闘態勢で働く神経”とも例えられ、

主に運動時に活性化して、心拍数を上げて動きやすい状態にしたり、

敵に襲われて出血しても少なくて済むように筋肉をこわばらせ、

血管を収縮させたりする働きがあります。

さらに、筋肉の活動に必要とされる酸素や栄養を十分に補うため、

血液は内臓よりも筋肉を優先して流れるようになります。

 
このような運動や戦闘態勢でなくても、

ストレスといった負の刺激を受けている状態では交感神経が優位になりやすくなります。

その結果、これら自律神経の支配を受ける内臓でも血管が収縮し、

血液が流れにくい状態になるのです。

 
しかも、現代人が抱える精神的なストレスは数多く、

1つ1つは“会議のある日”とか“出勤前”のように一過性であっても、

内臓から見ればこれらが連続的に起こり、慢性的になっていることも少なくありません。

特に肝臓は多くの血液を必要とする臓器ですから、

ここでの血行不良は全身へ影響を与えることにもなりますね。

その結果、肩こりからの頭痛へと発展する可能性もあるのです。

また、肝臓をはじめ内臓で作られる多くのホルモンの分泌体温調節などにも影響を与え、

結果として頭痛を招くこともあります。

 
現代人にとって“ストレス”をゼロにすることは非常に難しいので、

自分なりのストレス解消を心掛けることも大切です。

また、過度の疲労も知らず知らずのうちにストレスを招きます。

疲労を貯め込まないように休息をとることは、

体を休めるだけでなく、神経や内臓の回復にもつながります。

気づかぬうちに頭痛の原因を貯め込んでいる可能性もあるので、

無理しすぎないように気をつけたいですね。

特に睡眠は頭痛の原因となる肝機能障害を軽減し、ストレスも解消するのに最適です。

頭痛や肝臓の不調を感じた時は睡眠不足にならないよう積極的に取るようにしましょう。

 

頭痛を軽減するには

何らかの肝臓の機能障害が影響した結果として生じている頭痛は、

根本的には肝機能が改善しないと治まらないものです。

そのためには暴飲暴食を止め睡眠をたっぷりととるようにしましょう。

症状が落ち着いていれば、適度な運動もおすすめです。

全身の血行促進につながるため、肝臓に酸素や栄養素を運ぶことができ、

肝機能をサポートしてくれます。

また、肝臓の影響による頭痛は肩こりに起因することもありますから、

肩や首筋などのストレッチをして、緊張を解きほぐしてあげましょう。

 
最近ではウイルス性肝炎も様々な治療法が確立され、

抗ウイルス剤インターフェロンなども用いられています。

検査でウイルス感染がわかれば早期に治療を開始することができますから、

頭痛や気になる症状がある場合は医療機関を受診するのが一番です。

なお、自己判断で頭痛薬を飲み続けることは危険です。

薬剤はどんなに体に良いものであっても肝臓での解毒の対象となり、

大きな負担をかけることになります。

このため、薬を飲み続けると肝機能が低下し、頭痛を促してしまう可能性も否定できません。

頭痛が続く場合は医師に相談してみることをおすすめします。