「貧血」というと、真っ先に考えるのが“鉄分不足”ではありませんか?

しかし、貧血の原因は鉄分の欠乏によるものだけではありません。

中には内臓の病気が原因で貧血を起こすことだってあるのです。

特に血液と深い関りを持つ「肝臓」では、

貧血は肝機能の低下と共に起きやすい症状の1つと言えます。

ここでは肝臓の機能低下によっておこる貧血のメカニズムと、

肝臓の病気についてお伝えします。

 

貧血とは?

「貧血」とは一言でいうと、

何らかの異常によって“血液が薄まっている状態”を示します。

 
しかし、その理由は様々です。

多くの場合は、

  • ヘモグロビンが減少している
  • 赤血球の数が少ない
  • 赤血球の大きさ(容積)が異常

といった状態になった時に発症します。

 
これらに異常があると動悸息切れなどの症状が現れ、

体内の酸素不足による全身倦怠感(だるさ)を生じます。

また、脳内でも酸素が不足するため、眠気を催しやすくなります。

 
貧血はこれらの要素が組み合わさって起こる場合もあります。

もう少し詳しく説明しましょう。

ヘモグロビンの減少

ヘモグロビンは赤血球の中に存在する色素の一種で、

酸素と結びついて全身へ供給し、二酸化炭素を回収してくるという役割を持っています。

このヘモグロビンの数が減ってしまうと、

赤血球の数や大きさは正常でも、酸素の供給不足が起こるため貧血症状が現れます。

ヘモグロビンが減少する理由の1つに「鉄」の欠乏があります。

鉄欠乏性貧血と呼ばれるもので、一般的な貧血の原因として最も多く見られます。

赤血球数の減少

赤血球は性別や年代、個人差などで多少の差はあるものの、

ほぼ一定数に保たれるようにコントロールされています。

しかし、成人の場合、男女とも350万個/㎕未満になると

赤血球が少なくなる要因が体のどこかにあると診断されます。

 
赤血球の減少は、赤血球の生産量と破壊量のバランスが崩れているために起こります。

これには、赤血球を作る骨髄に異常がある「再生不良性貧血」や、

遺伝や循環器系の疾患によっておこる「溶血性貧血」などがあります。

赤血球の大きさの異常

赤血球の大きさが正常値を逸脱する場合、

赤血球が作られる過程のどこかに異常があることを示します。

赤血球が作られる場所は骨髄ですが、

赤血球の元となる「赤芽球」から赤血球へと分化する過程は複雑で、

様々な因子が関係しています。

栄養素が不足することで生じるケースや、遺伝的な要因によるものなどもあります。

 
赤血球の大きさが変化すると、そこに含まれるヘモグロビンの量も変化するため、

この二つの要素を組み合わせた呼び方…すなわち、小さい場合は「小球性低色素性貧血」、

大きい場合は「大球性高色素性貧血」といった表現が用いられることが多いようです。

 

貧血がおきる肝臓の病気

肝臓は多くの血液を必要としますが、その構成物質である赤血球の産生に関与し、

産生や破壊を行う他の内臓器官とも深い関係にある臓器です。

そのため、肝機能の低下を伴うすべての肝疾患が、

赤血球へ影響を及ぼすといっても過言ではありません。

 
こういった肝臓の病気には、

肝臓に炎症がおきる「肝炎(ウイルス性、アルコール性などの食習慣によるものなど)」、

肝細胞が線維化して硬くなる「肝硬変」、細胞がガン化する「肝臓ガン」などがあります。

また、アルコール性・非アルコール性による「脂肪肝」も肝炎に進行することがあり、

肝硬変や肝臓ガンを発症する可能性があります。

まれですが、急性肝炎の一部から発症する「劇症肝炎」でも貧血をおこします。

 
また、病気の発症に至らなくても、肝機能が低下していると貧血をおこすこともあります。

疲れやすい、胃がもたれる、尿の色が濃い、便の色が白っぽいなどの症状は見られませんか?

貧血がおきたら鉄分不足と決めつけず、他の症状が出ていないか確認することが大切です。

心配であれば血液検査を受けることをおすすめします。

肝機能低下の状態を把握することができますよ。

 

肝臓の病気と貧血のメカニズム

貧血の要因は前述のように様々ですが、肝臓の機能低下が影響する場合もあります。

代表的なものを紹介しましょう。

赤血球の異常

赤血球が大きくなってしまう大球性貧血のほとんどは巨赤芽球性貧血で、

悪性貧血とも呼ばれます。

正常な赤血球は、様々なコントロールを受け、

骨髄で赤芽球から分化することで誕生します。

しかし、この過程でDNAの合成が阻害されると正常な赤芽球が作られず、

巨大化して巨赤芽球が生じてしまいます。

 
このDNA合成阻害の要因としてビタミンB12葉酸の欠乏があります。

ビタミンB12は腸で吸収されるとタンパク質の一種“トランスコバラミン”と結合し、

血液を介して主に肝臓で貯蔵されています。

一方の葉酸も肝臓で貯蔵され、

ビタミンB12と共に腸肝循環と呼ばれる代謝経路で肝臓と腸の間を行き来しています。

つまり、どちらも肝臓を経由していますね。

一般的に、肝機能が低下すると

肝臓でのビタミン類の貯蔵能力は30%~50%程度に減少すると言われています。

これらの理由によって、肝機能が低下するとビタミンB12や葉酸の欠乏が起こり、

巨赤芽球を生じやすくなる結果、貧血症状を示すわけです。

 
また、慢性的な肝疾患から脂質の代謝異常を起こしていると、

コレステロールのエステル化を行う過程で異常が生じることがあり、

赤血球の膜が大きくなって巨大化することもあります。

脾臓への影響による貧血

肝臓の機能低下は、脾臓の機能を亢進することにつながる場合があります。

これは肝臓が炎症を起こしたり線維化したりして門脈を血液が通過しにくくなると、

その分の血液が脾臓に流れ込んでしまうことが原因です。

このため脾臓は大きくなり、

役割の1つである“赤血球の破壊”が通常よりも多く行われるようになります。

本来なら赤血球の寿命は120日程度ですが、

脾臓の機能亢進により、作られたばかりの赤血球も壊されてしまうようになるのです。

このため、赤血球が不足して貧血を起こしてしまいます。

脾臓の機能亢進症では、赤血球のほか白血球や血小板も減少してしまうため、

感染症にかかりやすくなったり、出血しやすくなったりする症状も見られます。

腎臓への影響による貧血

「肝心要(かなめ)」という言葉があるように、肝臓と腎臓は密接な関係にあります。

そのため、肝炎が悪化して肝硬変や劇症肝炎を発症すると、腎不全を起こしてしまうのです。

腎臓は尿の生成などを行う臓器ですが、

血液をつくる働きを促すホルモン“エリスロポエチン”の産生もしています。

腎不全によってエリスロポエチンが不足すると、

血液が産生されにくくなるため、貧血状態になります。

これを「腎性貧血」と呼びます。

出血による貧血

肝臓を含むがんの多くは体内で慢性的な出血を起こすことがあり、

貧血の原因になることがあります。

また肝臓ガンが転移などして鉄の代謝に関係する臓器に異常をおこしたりすると、

鉄欠乏性貧血を発症することもあります。

また、肝硬変では他の消化器官に負担がかかることがあり、

食道静脈瘤破裂などを起こして貧血になることもあります。

この場合は緊急に輸血が必要になります。

 
ここで紹介した貧血、つまり、骨髄や赤血球自体の異常ではなく、

肝臓の機能低下のように他の原因で起きる貧血を「続発性貧血」といいます。

 

改善の方法

一般的な「鉄欠乏性貧血」や「巨赤芽球性貧血」であれば、

鉄分やビタミンB12、葉酸などを補給すれば貧血は改善していきます。

しかし、続発性貧血の場合、貧血の原因となっている疾患が回復しなければ、

いくら補給しても貧血は治りません。

例えば、肝機能が低下したために生じた巨赤芽球性貧血ならば、

ビタミンB12や葉酸が十分あったとしても、

必要とする骨髄へ供給しにくい状況になっているため、症状は改善されないのです。

ですから、基礎疾患である肝臓を改善することが貧血の症状改善にもつながります。

肝炎や肝硬変などを発症している場合は、医師の指示に従って生活するようにしましょう。

 
軽度の肝機能低下であれば、生活習慣を見直すことで、肝臓の回復を促すことができます。

まずは食べ過ぎ・飲み過ぎといった食習慣を改めましょう。

できれば禁酒や休肝日を設けるなどして、

肝臓からアルコール分解という大きな負担を取り除いてあげましょう。

また、糖質の代謝も肝臓をフル稼働させてしまうので、

糖質の摂取量を減らし、良質なタンパク質や繊維質の食材をバランスよく摂りましょう。

 
個人的には、肝臓の機能が低下している人は、

必要な栄養素はできるだけ食材から摂ることをおすすめします。

サプリメントなどは手軽に補給できるメリットがありますが、

どうしても添加物を含んでしまいます。

添加物すべてが有害ではありませんが、

肝臓から見ればアルコールのように有害物に分類され、

解毒の対象となる物質も少なくありません。

健康なら特に問題ありませんが、

ダメージを受けている肝臓なら余計な負担はかけない方が回復は早まります。

ただし、肝障害の症状が現れている場合は、

食生活を含め、医師の指示に従ってくださいね。

 

注意すべきこと

肝機能が低下していて貧血を起こしているのに、

鉄分が足りないために起きていると思い込んで鉄分を補給することは逆効果です。

特に、C型肝炎の場合は注意が必要です。

なぜなら、C型肝炎ウイルスに感染すると鉄分を貯め込みやすくなってしまうからです。

ここにサプリメントやレバーなど鉄分豊富な食材を摂ってしまうと、

さらに肝臓内の鉄分量が増加してしまいます。

 
鉄は体内で重要な働きをするミネラルですが、

非常に酸化しやすい性質のため、活性酸素を発生させやすい物質です。

活性酸素は細胞やDNAを傷つけ、肝臓の炎症を悪化させることにつながります。

また、鉄にはC型肝炎の治療薬“インターフェロン”を効きにくくする作用があります。

「貧血=鉄分の補給」と思い込まず、

きちんと原因を見つけて正しい対処をすることが大切です。