「百害あって一利なし」と言われるタバコ。

肺や気管への悪影響はイメージしやすいですが、

実は呼吸と無関係の臓器にもダメージを与えることがわかっています。

その1つが「肝臓」です。

ここではタバコが及ぼす肝臓へのダメージを中心に、

副流煙禁煙の効果について詳しくまとめました。

 

タバコとは?

タバコはトマトやジャガイモと同じナス科の植物です。

現在、喫煙目的で栽培されるタバコは2種類ですが、

多種多様な品種に改良され、世界各地で生産されています。

世界には“噛みタバコ”や“嗅ぎタバコ”、水タバコやパイプなど

様々な喫煙スタイルがありますが、

本記事では日本の主流である“紙巻きタバコ”について解説していきます。

タバコを“吸う”ということ

タバコには“煙”がつきものですね。

煙には、口を通って気管や肺に取り込まれる煙(主流煙)と

これを吐き出したときの煙(呼出煙)、

さらにタバコから直接立ち昇る煙(副流煙)の3種類があります。

煙にはタバコの葉の燃焼によって生じたススの他、様々な物質が含まれていますが、

これらの煙の種類によって含まれる成分や性質に違いが生じます。

人体に有害な物質に着目してみてみると、

喫煙者の体内に入る主流煙はフィルターを通過しているため減少していますが、

フィルターを介さずに放出される副流煙は主流煙よりも多くの有害物質を含んでいます

これについては別項で詳しく触れますね。

また、主流煙は酸性のため低刺激ですが、

副流煙はアルカリ性なので目や鼻を刺激し、ツンとした痛みを感じさせます。

タバコの有害物質

では、タバコにはどんな物質が含まれているのでしょうか?

ファイザー製薬㈱によると、タバコの煙には4,000種類もの化学物質が含まれており、

有害物質は200種類以上、発がん性物質は50種類以上にのぼるとのことです。

これらの有害物質には

  • 神経系へ影響を及ぼす「ニコチン
  • 有害物質を多量に含む「タール
  • 酸素を取り込みにくくする「一酸化炭素
  • ペンキ除去剤に使われる「アセトン
  • 生物毒性が高く農薬や駆除剤に利用される「ヒ素
  • 公害問題にもなった「カドミウム

などがあります。

もちろん、1本のタバコに含まれる量は多くありません。

しかし、中には「薬理作用により中枢神経系の興奮と抑制が生じ、

心臓・血管系への急性影響をもたらす」ものもあります(厚生労働省「最新たばこ情報」)。

これについては後述しますね。

 
そして、タバコの大きな問題点は、常習化するということ。

一回あたりの量は少なくても、

1日何本もの量を何年間も摂り続けることでリスクが非常に高まるところにあるのです。

この原因となるのが、ニコチンです。

ニコチン中毒」という言葉が示す通り、

タバコを繰り返し吸ううちに依存性が生じてしまいます。

そして、この依存性が

タバコの急性作用に加えて重大な健康問題を引き起こすことになるのです。

 

タバコと健康

依存性のある物質は私たちの身近に溢れています。

例えば、お酒に含まれるアルコール、コーヒーに含まれるカフェインも依存性物質の1つです。

危険で有名なものにはヘロインやコカインといった麻薬もありますね。

ところがタバコに含まれるニコチンには

ヘロイン・コカインを上回る依存性があることがわかっています。

禁煙に挑戦しても成功しにくい理由は、この強い依存性にあったのですね。

 
この強い依存性によって長期間にわたっての喫煙習慣があると、

健康へ様々な害を及ぼすことになります。

厚生労働省は、「21世紀における国民健康づくり運動」において、

“たばこは、肺がん、心筋梗塞等の虚血性心疾患、

肺気腫等の慢性閉塞性肺疾患など多くの疾病や、

低出生体重児、流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子である”

としています。

これに対し、日本でタバコの製造が唯一許可されているJT(日本たばこ産業)の見解は

次のようになっています(ホームページより一部抜粋)。

“がん等、喫煙と関連があるとされる諸疾病の発生には、

住環境(大気汚染等)、食生活、運動量、ストレス、遺伝的要因等

様々な要因が影響しており、

動物実験において(中略)腫瘍が発生したとの報告もありますが、

これらの実験は、通常の人の喫煙条件からかけ離れた条件で行われたものであり、

通常の人の喫煙の条件による腫瘍の発生については明らかにされていません。”

“更なる研究が必要であるものの、

私たちは、喫煙が特定の疾病のリスクファクターであると考えています。

喫煙するかしないかは、喫煙の健康への影響・リスクに関する情報に基づいて、

個々の成人の方が決めるべきものです。”

つまり、タバコは病気を発生させるリスクファクターであるものの、

発症に至る過程には個々の習慣や環境、遺伝などの要因が複雑に関係しているという考えです。

純粋にタバコの煙だけの弊害を検証するのは難しいですが、

肺や喉など直接的に煙が触れる部位については

タバコ自体の影響がもっと大きいと見る有識者が多いのが現状です。

他の疾患についてもタバコが悪影響を与えることで、

発症を加速させたり悪化させたりする可能性が非常に高いと見るのが妥当だと言えるでしょう。

 

肝臓への影響

それでは、呼吸器から離れた場所にある「肝臓」にもタバコの影響はあるのでしょうか?

国立がんセンターでは、

肝臓がんの場合、非喫煙者と比べたがん死亡リスクは1.5倍に上ると公表し、

肝臓がんを発生させるすべての原因のうち、喫煙の占める割合を28%と推定しています。

そのほか、肝臓のように呼吸器系から離れた所に位置する胃・すい臓・膀胱といった臓器でも、

がん発生の約30%においてタバコをリスクファクターと捉えています。

 
もともと、肝臓は前述のJTが指摘する環境や習慣など

個々の要因によっても障害がおこりやすい器官です。

特に飲酒によるアルコールの分解、過食による代謝機能への負荷、

ストレスによる活性酸素の発生などは

肝臓に大きなダメージを与える要因として知られていますね。

つまり、直接的に肝臓に影響しなくても、

これらの要因を持っている人には

タバコが間接的に追い打ちをかける要素に成りうるということです。

また、こういった要因がない人でも常習的かつ長期的に喫煙を続けていれば、

間接的なダメージが積もり積もって肝障害に発展するケースも起こります。

日本内科医学会の専門会誌には、

喫煙は慢性肝炎や肝硬変を1.2倍起こしやすい。その程度は飲酒と変わらない。”

と報告されています。

そして、煙による影響は吸っている人だけでなく、

周囲にいる人にも“受動喫煙”という形でダメージを与えるのです。

 
では、タバコがどのようなダメージを肝臓に与えているのでしょうか?

具体的には次の3点が考えられます。

肝臓が有害物質を代謝

肝臓には体内にある有害物質を代謝する働きがあります。

タバコの煙に含まれる有害物質の多くは肺に取り込まれますが、

残りは口内の粘膜や唾液に溶け、胃の粘膜を介して吸収されます。

そして血液中に溶け込み、体中を巡りますが、これらは肝臓を通過する際に代謝されます。

特に「ニコチン」はほとんどが肝臓で代謝され、腎臓から排出されます。

また、煙に含まれ有害物質の中には

“青酸”とも呼ばれる毒性の高い「シアン化水素」もありますが、

これも主に肝臓で代謝されています。

肝臓は高性能の化学工場のような役割を担っている器官で、

非常に多くの仕事をこなしていますが、

喫煙によって有害物質の代謝という“余計な作業”を行うことになると、

必要以上に肝臓を働かせたり、本来の役割をこなせなくなったりしてしまいます。

タバコによって、肝臓は慢性的にダメージを受け続け、

肝障害を引き起こす可能性が高くなるのです。

このままダメージを受け続けると、肝細胞は線維化して「肝硬変」を発症してしまいます。

肝硬変は驚異的な肝臓の再生力をもってしても回復が難しい状態です。

タバコなどの負担を避けるよう、配慮した方が良いでしょう。

血流悪化・酸素減少による肝機能の低下

ニコチン」というと常習性にばかり目が行きがちですが、

急性的には末梢血管を収縮させ、血液循環を悪くする作用があります

また、煙に含まれる「一酸化炭素(CO)」は

赤血球にあるヘモグロビンと結合して全身を巡ります。

ヘモグロビンは通常なら酸素と結合して各組織へと運ぶ役割を持っていますが、

一酸化炭素とヘモグロビンの結合のしやすさは酸素の200倍以上と言われるほど強いため、

酸素と結合できなくなってしまうのです。

 
肝臓は多くの化学反応を行うため、

その材料となる物質や反応を促進する酸素を大量に必要とする臓器です。

ところが、ニコチンによって肝臓への血流が悪化し、

一酸化炭素によって酸素の供給量が低下することで、

肝臓の負担が増し、機能が低下してしまいます。

肝臓には機能が低下してもそれを補おうと頑張る代償作用が備わっていますが、

この状態が続くと細胞が炎症を起こし、肝炎を発症してしまうのです。

肝炎は多くの肝臓病の初期症状ともいえます。

この状態が続くと肝硬変に至る可能性も考えられるので、

肝臓が回復できるようタバコなどの負担を軽減してあげましょう。、

細胞のがん化

タバコの煙には50種類以上の発がん物質が含まれています。

これらの多くは、細胞分裂などでDNAの複製が行われるときに遺伝子の変異を引き起こします。

細胞のがん化はこのような遺伝子の変異が蓄積することによっておこると考えられています。

国立がん研究センター・がん情報サービスでは、

“胃がん、肝臓がん、子宮頸がんは、

それぞれピロリ菌、肝炎ウイルス、パピローマウイルスという

微生物感染との関連”がありますが、

“それらの感染の影響を除いても喫煙と因果関係があると判定

としています。

また、国立がんセンター・予防研究グループでは、

喫煙によって肝がんのリスクがおそらく高くなる”と評価しています。

この微妙な表現は、2004年に行われた国際がん研究機構において

肝がんはたばこ関連がんの1つ」と位置付けられたことを受けたものの、

肝炎ウイルスなどの影響を排除した上でのデータではないため、

タバコだけで肝がんリスクが高くなるとは言い難い、という背景によるものです。

ただし、肝炎ウイルスなどの影響は無視できないことではあるが、

日本における疫学研究で喫煙がヒトの肝がんリスク上昇を示しているのは明らかであるとし、

肝炎ウイルス感染の有無を検証した上での解析が必要、と結論しています。

タバコと肝がんの発生は無関係とはいえないということですね。

 

周囲への影響 ~環境タバコ煙と受動喫煙~

タバコの弊害は吸った本人だけでなく、

周囲にいる人へも悪影響を与えることが大きな問題になっています。

いわゆる受動喫煙ですね。

この原因となるのが「環境タバコ煙」で、タバコを吸った人が吐き出した煙(呼出煙)と、

タバコから直接立ち上る煙(副流煙)を併せたものです。

 
平均的な喫煙行為をした場合の煙の成分を見てみましょう。

厚生労働省によるタバコ煙の分析によると、

1本のタバコを吸うときには11回主流煙を吸い込み、呼出煙を吐き出し、

吸わない時間の合計6分間は副流煙を発生させているそうです。

ここで注目したいのは、それぞれの煙に含まれる有害物質の内訳です。

(「厚生労働省の最新たばこ情報」より抜粋)。

 

《タバコの煙に含まれる有害物質》
物質名主流煙副流煙
《有害物質(㎎/本)》
タール10.2 34.5
ニコチン0.46 1.27
一酸化炭素31.4 148
《発がん物質(ng/本)》
2-ナフチルアミン1.7 67
ジメチルニトロソアミン5.7-43680-823
ベンゾ(a)ピレン20-40 68-136
ヒドラジン32 96

このように、副流煙の方が有害物質を多量に含んでいることがわかりますね。

吸った本人はリスクを承知の上で吸っているかもしれませんが、

近くで副流煙を吸い込む人の方も大きなタバコの害を受けることになるわけです。

つまり、タバコによる肝臓へのダメージも本人だけにとどまらないということですね。

 
最近では公共施設の禁煙分煙も多く見られるようになりましたが、

自宅での喫煙でもこうしたリスクを理解した上で家族に配慮することも必要です。

特に肝機能が低下している人がいる場合は、

喫煙が肝臓に負担を与えることを知り、煙がその人に届かないようにするべきです。

まして本人に肝障害があるような場合は、

その症状を進行させた悪化させたりする可能性が十分に考えられます。

肝機能の回復には暴飲暴食を控え肝臓を休ませることが有効ですが、

同じく負担となっているタバコの影響も軽減するために禁煙も実行することをおすすめします。

 

禁煙のメリット

タバコにはニコチン中毒と称されるほどの依存性があり、やめるのが難しいと言われています。

でも、やめるのが難しくても禁煙にはその価値があります。

では、どのようなメリットがあるのでしょうか?

健康上のメリット

ここまでタバコによる健康への害を述べてきましたが、

禁煙するとどのくらいでこれらの影響が消えるのでしょうか?

厚生労働省「e-ヘルスネット」と福井県済生会病院の情報を元にまとめてみました。

 

《禁煙後の健康への効果》
禁煙後の経過時間効果
2~3週間後循環が改善する、歩行が楽になる、
肺機能が30%アップする、肌荒れが改善する
1~9ヵ月後せき・たん・息切れが改善する、
呼吸器感染が減少する、スタミナが戻る
1年後虚血性心疾患になる危険が1/2となる。
5年後肺がんになる危険が1/2となる。
10年後肺がんになる確率が1/10になる
10~15年後種々の病気になる危険が非喫煙者と同じレベルになる

タバコの害はすべてがすぐに無くなるわけではありません。

しかし、やめれば本人も周囲の人も健康へ一歩近づきます。

肝臓への負担やリスクも軽減できますね。

金銭的メリット

ファイザー製薬㈱によると、

タバコを1日1箱吸う人の8~12週間にかかるタバコ代は24,000~36,000円にもなるそうです。

1箱は400円くらいでも、毎日となるとかなりの金額になりますね。

仮に禁煙した場合、換算すると1か月で約5万円、

1年間で約60万円以上のお金を節約することができます。

また、このタバコ代を利用して禁煙の治療を受けることもできます。

同社の試算によると、健康保険などで治療を受けた場合、

3割負担の人では8~12週間で13,000~20,000円の自己負担額になるそうです。

タバコ代で禁煙治療費が賄えるわけですね。

もちろん、禁煙の辛い症状はずっと続くわけではないので、

これを抜け出せば治療も終了できます。

そのあとは浮いたお金を家族や自分のために使うことができます。

 
健康にもおサイフにもメリットがある禁煙。

体が悲鳴を上げる前に考えてみてくださいね。