体内の水分調節のバランスが崩れた時に生じる「むくみ」。

でも、その影に深刻な病気が隠れているかもしれません。

その一つが肝臓病。

そして、肝臓病による「むくみ」は、通常のむくみ解消法では改善しにくいのです。

ここでは、肝臓の機能障害によって引き起こされる「むくみ」について、

そのメカニズムや改善策、注意点について解説しています。

 

「むくみ」の種類と原因

「むくみ」は日常的にも耳にする言葉ですね。

特に女性にはむくみで悩んでいる人も少なくないと言われています。

しかし、このような「一般的なむくみ」と、肝臓病などによる「病的なむくみ」には、

大きな違いがあります。

一般的なむくみ

一般的な「むくみ」は長時間同じ姿勢をとり続けたり、

血液循環が滞ったりすることで生じます。

あるいは、塩分の摂り過ぎ・お酒の飲み過ぎなどで

むくんだ経験がある人も多いと思います。

このようなむくみは、水分の代謝が崩れたり、物質の運搬が滞ったりし、

体全体や一部に過剰な水分が溜まった結果、起こるものです。

ですから、むくみが生じるのも“寝起きの顔”や“夕方の足”など

時間帯と部位が生活習慣と密接に関係している傾向にあります。

そして、症状も一時的です。

足のむくみは体を横たえて休んだり、入浴やマッサージをしたりすれば楽になりますし、

顔のむくみは起きてしばらくすると自然に解消されていることもありますね。

こういったむくみの多くは、不快感を感じても病的なものではない場合が多いのです。

肝臓病によるむくみ

しかし、病的…特に肝臓病による「むくみ」の場合は、

こういったむくみとは発生のメカニズムも症状も異なります。

 
肝臓には“タンパク質の合成をする”という重要な働きがあります。

このタンパク質の1つに「アルブミン」があります。

アルブミンは、血液中に存在するタンパク質の50~65%を占める分子量の大きな物質です。

そのため、水やナトリウムなどのように、

血管の壁にある隙間から出入りすることができません。

では、アルブミンの役割は何かというと、血管内の水分量を保つことなんです。

水はいろんな栄養素を溶かし、血液として運搬する役割を持っています。

少ないと溶かせられる物質も少なくなりますし、血液も濃くなってしまいますね。

逆に、水が多すぎると血液量が増えて心臓などの負担が増してしまいますし、

運搬の効率も低下してしまいます。

こういった事態にならないよう、血液中の水分量を調節するのがアルブミンなんです。

アルブミンには水の分子を引きつける力があるので、

自身が存在する血管内に水分を留めておくことができるわけです。

このアルブミンの量を肝臓は調節しながら合成しています。

これは、体内の水分の濃度を常に一定に保とうとする“ホメオスタシス”とも関係しています。

 
ところが、肝機能が低下すると、必要な量のアルブミンを合成できなくなってしまいます。

すると、血管内のアルブミン量が低下するため、

血液中の水分が血管の外に染み出てしまうのです。

出ていった水分は細胞間に溜まっていき、

ここの水分が増えることで組織全体が膨れ上がって「むくみ」が生じるわけです。

このように、肝臓の機能が低下することによって生じるむくみのことを、

専門的には「肝性浮腫(かんせいふしゅ)」または「肝臓浮腫」と呼びます。

肝性浮腫は採血検査や腹部超音波検査で診断することができます。

 

考えられる肝臓の病気

肝性浮腫が生じる原因として最も多いのは「肝硬変」です。

肝硬変は肝炎・アルコール性肝障害・脂肪肝などが進行したもので、

肝臓の細胞が線維化し、硬くなった状態です。

線維化した肝細胞は、肝臓としての機能は失われていますから、

アルブミンなどのタンパク合成や他の栄養素の代謝、解毒などの処理はできません。

したがって、肝硬変を発症すると多くの患者にむくみの症状が現れます。

さらに腹水・黄疸・吐血などの重篤な症状が現れてきます。

 
しかし、肝硬変にまで進行せずとも、長期間にわたって肝機能が低下した状態では

アルブミンの合成能力が低下しています。

そのため、人によっては慢性肝炎・アルコール性肝障害・脂肪肝でも

肝性浮腫が見られるケースがあります。

また、お酒を飲んだ翌日にむくみが生じるのは、

体内のアルコール濃度を下げようとして水分を大量に欲したためと、

肝臓がアルコールでダメージを受けて

アルブミンの合成が追い付かなかったことが考えられます。

いずれにしても肝臓の処理能力を超えた量のアルコールを摂取したことになりますから、

自制する方が良いでしょう。

 
さらに肝疾患の中でも、特に「肝臓ガン」では足のむくみが顕著に見られます。

ガン細胞はとても貪欲なので、患者の栄養を横取りしていきますが、

そのうちに血液中のタンパク質であるアルブミンも低下していきます。

このため、どの部位のガン患者でもむくみを起こしやすくなりますが、

特に肝臓ガンではアルブミンの合成能力も落ちていますから、よりアルブミンが減少しやすく、

むくみが生じやすい状態になってしまうというわけです。

 

むくみの見分け方

前述のように、「一般的なむくみ」と「肝性浮腫」には大きな違いがあります。

この違い…すなわち、むくみが現れる場所や期間によって、

一般的か病的かを判断する指標になることもあります。

例えば、顔が朝、足が夕方にむくむような場合は一時的なむくみなので、

さほど心配する必要はありません。

しかし、慢性的にむくみの症状がある場合には、病的な原因を疑ってみましょう。

簡易的ではありますが、むくみの発生する部位により次のように見分けることができます。

 

簡易的なむくみの見分け方
主なむくみの部位期間原因
足・顔 一時的一般的なむくみ
足・顔慢性的腎性・心性などによるむくみ
慢性的肝性・甲状腺機能低下などによるむくみ

このように、肝機能が低下していると、むくみは下半身、特に足に生じやすくなります。

これは、肝細胞の線維化が進むなどして門脈圧が上昇すると、

肝臓へ流れ込むはずの血液がそうならず、下半身に流れてしまうからです。

下半身のむくみは重力の影響もあって起こりやすい部位なので、

肝性浮腫かの判断にはむくみと共に黄疸などの症状が現れていないかを

チェックする必要があります。

黄疸は皮膚などが黄色味を帯びてくる症状で、特に眼球の白目部分は発見しやすい部位です。

そして、気になる症状がある場合は血液検査などを受けましょう。

肝性浮腫はアルブミンの低下により起こるので、

血清アルブミン値や肝機能低下を示すγ-GTP、GOT、GPTなどを測定してもらい、

医師の診断を得ましょう。

 

改善する方法

むくみの症状は不快感を伴うので、少しでも改善したいですね。

肝機能が低下していくと、中には靴や靴下が履けないほど酷くなることもあるので、

むくみの改善は切実でもあります。

では、どうすればいいでしょうか?

効果が期待しにくいマッサージ

通常、むくみのケアには

マッサージ・入浴・ツボ押し・軽い運動などが効果的と言われています。

これらの方法は、いずれも温めたり直接的な刺激を与えたりして、

血液循環を良くすることでむくみを改善しようというものです。

しかし、肝性浮腫の場合、これらの方法ではあまり効果が期待できないと言われています。

…というのも、肝性浮腫では本来なら血液の一部として血管内を循環しているはずの水分が、

細胞間に染み出してしまっているからです。

つまり、いくら血行を良くしても、細胞間の水分はほとんど移動できないのです。

 
しかし、マッサージなどを受けることで不快感が軽減されることもあります。

これは直接的にむくみを軽減しているというよりも、

血行を良くすることで肝臓に新鮮な血液を送り込み、

肝機能をサポートすることにもなるからです。

マッサージなどは補助的に行うと良いでしょう。

食べ物

同じ理由で、一般的なむくみに効果があると言われる食べ物も、

血行を促進したり、水分の代謝を上げたりすることを目的として食べるので、

肝性浮腫にはあまり効果的とは言えません。

原因はアルブミン量の不足にあるわけですから、

血液中のアルブミン量が増加しないとむくみの改善はあり得ません。

ですから、肝性浮腫の場合は肝機能をサポートする食品を摂る方が効果的と言えるでしょう。

特にアルブミンはタンパク質の一種ですから、アミノ酸から合成されます。

そのアミノ酸の元になるのもタンパク質なので、

肝臓が利用しやすい“良質なタンパク質”を摂取することが改善策の1つとなります。

 
良質なタンパク質というのは、

人間が食品から摂取しなければならない“必須アミノ酸”を豊富に含んだタンパク質のことです。

タンパク質は種類によって使われるアミノ酸が異なりますが、

その中の1つが不足しても合成できなくなってしまいます。

必須アミノ酸を筆頭に、バランスよくアミノ酸が含まれたタンパク質を摂ることが、

アルブミン合成のカギにもなるということです。

良質なタンパク質には牛肉・豚肉・鶏肉、乳製品、魚、卵、

植物性食品では大豆、枝豆などの豆類があげられます。

しかし、肝臓にダメージを受けている人にとって、

脂質やコレステロールを多く含むものや消化に悪いものは最適と言えません。

おすすめなのは、脂肪分が少ない鶏のささみや、体によい脂質を含むアジ・イワシなどの青魚、

無脂肪の牛乳やヨーグルト、発酵で消化が良くなっている納豆などです。

これらの食品を肝臓に負担をかけないように適量ずつ摂取しましょう。

 
また、肝疾患をもつ人の中には、むくみや腹水で水分が失われてしまうため、

喉の渇きを覚える人もいます。

こういう場合、むくんでいるからと水分摂取を控えるのはかえって危険なこともあります。

水分は必要な量をこまめに摂るようにしましょう。

漢方

肝性浮腫や腹水などが悪化すると、西洋医学でも利尿剤を処方することがあります。

漢方でも同様に体内の水分を排出することで、むくみの症状を改善するものが中心です。

肝疾患の状態にもよりますが、肝硬変がある程度進行した人には

次にあげた漢方薬を症状に応じて組み合わせ、使用することが多いです。

 
《肝機能の改善や悪化を防ぐことを目的としたもの》

  • 補中冶湿湯(ほちゅうえっきとう)

《体力を増強するもの》

  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
  • 人参湯(にんじんとう)

《むくみや黄疸に効果があるもの》

  • 茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)

 
ただし、漢方には「禁忌」と呼ばれる同時使用厳禁の薬草がありますので、

専門の漢方医に相談することをおすすめします。

また、医療機関で治療を受けている人は、主治医の指導に従ってくださいね。

一説によると医師の70%以上が漢方薬を併用していると言われています。

服用していた西洋医学の薬を漢方薬によって減らせるという例もあるので、

相談してみるのも良いと思います。

 

悪化させること

一般的なむくみも病的なむくみも、

貯まる場所に違いはあるものの体内の水分量が関係している点は同じです。

病的なむくみの原因はアルブミン量の低下にありますが、

これに一般的なむくみも加われば、不快感はさらに増すことになりますね。

ですから、体内に水分を引き留める「塩分」「アルコール」には注意が必要です。

肝性浮腫がおきているならアルコールは厳禁!

塩分は極力控え、ダシなどの旨味で味を補うようにしましょう。

 
同時に肝臓に負担をかけるような食べ方も良くありません。

脂質や炭水化物が多い食品は、代謝を行う肝臓に負担をかけることになります。

脂肪肝の傾向がある人は特に気をつけましょう。

 
なお、食品に含まれている化学薬品にも注意が必要です。

例えば食品添加物にあたる保存料・防腐剤や残留農薬などは、体にとっては異物です。

解毒の対象であるため、健康な肝臓なら問題になりませんが、

機能が低下している肝臓には負担になることがあります。

できるだけ無添加や無農薬の食品を選ぶようにしましょう。

同様に医薬品も体にとっては毒物です。

医師に指示された薬以外の摂取は避け、

薬の使用量を極力減らせるよう、肝臓への負担が少ない生活を心がけましょう。

 
なお、重篤な肝疾患の患者を除き、運動不足は肝臓によくないとされています。

運動をしないと全身の血流量が低下し、

肝臓が必要とする栄養や酸素などを送り込むことができないからです。

体を動かしたらしっかりと休息をとることを忘れずに、

適度な運動を採り入れるようにしましょう。

肝臓が気になる方はサプリメントという選択も

むくみにはいろいろな原因がありますが、

もし肝臓からくるものであれば、肝臓の改善が重要になります。

もし肝臓の問題をなるべく早く解決したいなら、肝臓サプリメントがおすすめです。

 

しじみや牡蠣など肝臓への効果が期待される栄養素が凝縮されており、

食事で摂取するよりも明らかに効率的に肝機能改善をおこなうことができます。