肝臓の病気で「かゆみ」の症状が出ることは一般的には知られていませんが、

実は数少ない肝疾患の自覚症状の1つとしてあげることができるほどです。

肝臓が原因で生じるかゆみには、皮膚に発疹などがないなどの特徴がいくつかみられます。

ここでは、肝臓でかゆみが生じる原因や、その対策について詳しくお伝えしています。

 

発疹と肝臓の病気

発疹とは皮膚炎の1つで、一般的には皮膚が盛り上がることを指します。

この盛り上がりは1ミリ以下~数センチ、

また、1つだったり数えきれないほどの数だったりと形態は様々です。

かゆみを伴う場合もありますが、赤みを帯びるだけの場合もあります。

また、患部だけが熱を持ったり、全身が発熱したりすることもあります。

しかし、こういった湿疹は肝臓の病気と無関係である場合が多いと言われています。

(肝炎を原因とする発熱はありますが、湿疹との因果関係は見られません。)

 
同様に、体内でヒスタミンが分泌されることによって起因する蕁麻疹(じんましん)

肝臓の病気との関連性は低いとされ、

特定の食物や環境などの条件や、心因性のものであるとされています。

蕁麻疹はその原因により手首などの汗が溜まりやすい部位や

腹部のように皮膚の柔らかいところにできやすいなどいわれますが、

接触によるアレルギー症状などを除けば、全身どこでも生じる可能性はあります。

 
肝機能が低下していると全身倦怠感疲れを感じることが多く、

このような時は抵抗力が落ちて湿疹や蕁麻疹も発症しやすい傾向があるため、

肝機能と発疹に関係があるように感じられるのかもしれませんね。

 
しかし、肝臓は体内の代謝の中心であり、老廃物の排出も行う重要な臓器です。

このため、次のように二次的な要因として発疹が見られることもあります。

吹き出物

肝臓の機能が低下すると、体内での量がコントロールされている物質が

増加したリ減少したりすることがあります。

例えば、ホルモンや有害物質などです。

これらの濃度の変化がきっかけとなったり、皮膚が老廃物の排出先となったりして、

湿疹が出てしまう可能性はあります。

また、肝臓は脂質の代謝にも関わっていますから、

これがスムーズにいかないことで皮脂が過剰になることがあります。

このような場合はいわゆる「ニキビ」のような吹き出物として生じることが多いようです。

肝機能検査を受けて数値が悪かった場合、

肝臓を労わると吹き出物が出にくくなったり落ち着いたりすることもありますよ。

アルコールの影響

「お酒を飲んだら蕁麻疹が出た」という人は少なくありませんが、

これも肝臓と直接的には関係していません。

もともとアルコールに対する感受性が強かったり、

アレルギーを持っていたりする場合が多いようです。

こういう人はアルコールを含ませた消毒綿に触れるだけでも発赤します。

あるいは、アルコールそのものではなく、

ワインやビールなどに含まれる食品添加物“亜硫酸塩”などで蕁麻疹がおきることもあります。

 
一方で、蕁麻疹の中には、急激に体が温まった時に生じる「温熱蕁麻疹」や、

発汗時に生じる「コリン性蕁麻疹」などがあります。

お酒を飲むと血管が拡張して血液の循環が良くなり、体が温まったり汗をかいたりしますね。

飲酒による体調の変化が引き金となって蕁麻疹が現れた可能性もあるわけです。

 
また、長期にわたるアルコールの摂取によって前述のように肝機能が低下し、

吹き出物などの湿疹を生じさせていることもあります。

 

かゆみと肝臓の病気

肝臓の病気との関係が深いのは、

湿疹のような目に見える症状がないのにかゆみを感じている場合です。

実態

肝臓の病気とかゆみにはあまり関係がないと思われがちですが、

決してそんなことはありません。

大日本住友製薬によると、日本肝臓病患者団体協議会が行った肝炎患者2138人を対象とした

アンケート調査(「肝臓のなかま」号外:3969, 2012)では

肝炎患者の4~5人に1人がかゆみを訴えているという結果が出ています。

自覚症状が出にくいと言われる肝臓の病気ではありますが、

その中でも「体がだるい」「体力が弱ってきている」に続く症状として

「かゆみ」を上げている実態があります。

原因

肝機能が低下していくと、肝細胞・肝内胆管などに障害が起こったり、

胆管の閉塞が起こって胆汁が排泄されなくなったりし、

血液中のビリルビン濃度が上昇していきます。

これによって、皮膚や眼球の白目部分が黄色味を帯びる黄疸がおこります。

かゆみはこの黄疸に先んじて現れることが多いようです。

 
その原因は、血液や組織内に増加したビリルビンや胆汁酸などが

皮膚の末梢神経を刺激するためだと言われています。

さらに、この胆汁酸などが高濃度になると肝臓の細胞膜を破壊することがあります。

その際に膜からかゆみを引き起こす要因となるインターロイキンなどの

起痒物質が遊離するためとも言われています。

 
また、肝疾患によるかゆみは、

体の中で産生される物質“オピオイド”に関係があると考えられています。

オピオイドは体内でモルヒネに似た作用を示す物質で、いくつかの種類が存在しますが、

かゆみを引き起こす「β-エンドルフィン」やかゆみを抑える「ダイノルフィン」などが

かゆみの発現や消失に関わっています。

例えば、β-エンドルフィンが神経細胞にある特定の受容体に結合すると、

それが刺激となって「かゆい」という感覚が生まれるのです。

通常はこの2つのオピオイドがバランスを保っていてかゆみは生じません。

しかし、肝臓に疾患を抱えた人ではこのバランスが崩れ、

β-エンドルフィンを含め、かゆみを起こすタイプのオピオイドの増加が確認されています。

なお、かゆみを起こすオピオイドがなぜ増加するのかという点は明らかになっていません。

特徴

肝臓の機能低下によるかゆみには次の傾向が見られます。

肝臓によるかゆみの特徴

  • 全身がかゆい
  • 眠れないほど強いかゆみがある
  • 見た目の異常(発疹など)はないがかゆい
  • 一般のかゆみ止め薬が効きにくい
  • 掻いてもかゆみが治まらない

 
中でも「薬が効きにくい」「掻いても治まらない」という点が特徴的です。

これは、アレルギーや乾燥によるかゆみなどが“末梢性”であるのに対し、

肝臓の病気による場合は“中枢性”によるものだからです。

中枢性のかゆみは脳やせき髄などの神経を伝わるもので、オピオイドが関与しています。

このため、市販のかゆみ止めなどでは抑えることはできません。

医師に相談して、中枢性のかゆみに効く薬を処方してもらうようにしましょう。

 
このようなかゆみは黄疸や肝細胞の破壊を伴う病気ではかゆみを生じやすく、

肝炎肝硬変肝臓ガンなどでは症状が出ることも多いです。

また、アルコール性の肝障害脂肪肝なども、症状が進むとかゆみの症状が現れてくる可能性は十分にあります。

中でも原発性胆汁性肝硬変ではかゆみを訴えるケースが多く、

患者の7割にも上るという報告があるくらいです。

また、肝臓の病気ではありませんが、中枢性のかゆみは腎障害でも現れやすい症状です。

改善の方法

前述の通り、中枢性のかゆみに対して市販薬では効果を得にくいので、

かかりつけの医師に相談してみましょう。

最近は、かゆみを誘発するオピオイドの受容体を抑制したり、

逆にかゆみを鎮める受容体を活性化したりする

μ-オピオイド拮抗薬」「ҡ-オピオイド作動薬」などが開発されています。

 
「かゆみ」は搔き壊すと皮膚の炎症につながるだけでなく、

人目を気にしたり、眠りを浅くしたりと

患者の生活の質(QOL:Quality of Life)を低下させる大きな要因になってしまいます。

また、肝臓の回復には休息が大切ですが、

かゆみによってこれが妨げられるケースも少なくはありません。

適切な薬を使用して、少しでもかゆみを軽減し、

質の高い毎日が送れるようにしていきましょう。